10. 等価騒音レベルの測定方法(JIS Z 8731:2019 の概要)

JIS Z8731 についても、1983 、1999 年に続き、(国際標準化機構)ISO 1996-1 2016、ISO 1996-2 2017を基礎として改訂されました。
以下のような構成となっております。規格の内容に関しては、規格書をご参照ください。

4.測定
4.1 一般事項
4.2 測定器
4.3 測定点
4.4 気象条件
4.5 定常騒音の測定方法
4.6 最大騒音レベルの想定方法
4.7 Nパーセント時間率騒音レベルの測定方法
4.8 単発騒音暴露レベルの測定方法
4.9 等価騒音レベルの算出方法
5 記録事項
 附属書JA (参考) 騒音計の周波数重み付け特性
 附属書JB (参考) 騒音計の時間重み付け特性
 附属書JC (参考) 一般地域における環境騒音の測定方法
 附属書JD (参考) 道路に面する地域の環境騒音の測定方法
 附属書JE (参考) 航空機騒音の測定方法
 附属書JF (参考) 新幹線鉄道騒音の測定方法
 附属書JG (参考) 在来鉄道騒音の測定方法
 附属書JH (参考) 風車騒音の測定方法
 附属書JI (参考) 特定工場などにおいて発生する騒音の測定方法
 附属書JJ (参考) 特定建設作業に伴って発生する騒音の測定方法
 附属書JK (参考) JISと対応国際規格との対比表
 附属書JL (参考) 技術上重要な改正に関する新旧対照表

我が国の環境騒音の測定事情に照らし合わせ、この規格を引用し環境省が公表する マニュアル、規制などに対して迅速な理解を図るために参考としてJC~JJが記載されています。

今まで、暗騒音と表現していたものを背景騒音と定義されました。

 

10-1 測定に影響を与える環境条件

(1)気象条件、地形、地表面形状

騒音が屋外を伝播する場合に、風や気温などの気象条件や地形あるいは地表面形状などによって、大きく影響を受けることがあります。例えば、風による影響としては、風が無いときに比べ、一般に順風のときには伝播音の大きさは増大し、逆風のときには減少します。また、気温による影響としては、一般に気温の垂直方向の分布が、上空ほど低温で地表面で高温の場合には音が伝播し難く、上空ほど高温で逆転層のある状態のときには伝播し易くなります。地面に沿って音が伝播する場合、一般に田畑や草地などの吸音性の高い地表面上では、舗装面などの反射性地表面上と比べて音の減衰が大きく、遠くまで伝播し難くなります。したがって、騒音測定時の条件として、天気などとともに測定点近傍での風向き、風速、温度、相対湿度などの気象条件、および地形や地表面形状などをできるだけ明確に記録しておくことが必要です。

(2)風雑音の影響

騒音計のマイクロホンに強い風が当たると、その部分でいわゆる風雑音が発生し、特に測定対象の音が風雑音に比べて相対的に小さいときなどには信号対雑音比が不足して、測定が不可能となります。従って、屋外や風を発生する機械類の近傍などで騒音を測定する場合には、風雑音を低減させるために工夫された防風スクリーンを装着する必要があります。ただし、風速が大きくなると防風スクリーンによる風雑音の低減効果にも限界があるため、強風時の測定は避けるべきです。

(3)その他環境条件の影響

電気機械類の近傍では、強い電界・磁界が形成されていることが多く、そのような場所に騒音計を置くとマイクロホンや騒音計本体の電気回路部分に影響がおよび、指示値が不正確になることがあります。マイクロホンケーブルを延長して使用する場合には、延長ケーブルの部分でこれらの影響を受け易くなります。また、各種の機械類などが発生する振動が騒音計本体に伝わり、測定に影響を及ぼすこともあります。さらに、高温や多湿の環境条件下では騒音計などの計器類に支障を来たすことが有ります

以上述べたように、各種の影響があるため、事前にそれらの影響の有無と程度を確かめておくことが必要であり、影響が問題となりそうな場合には、影響の要因毎に適当な遮蔽や防振などの対策を工夫するとともに、測定点の選定に十分注意することが大切です。

 

10-2 音の伝搬と距離減衰

第 1 章にも記しましたように、音(音波)は、空気中を約 340 m/s の速度で伝搬して伝わっていきます。 その時、特に遮断や吸収などの妨害物がなくても、伝搬した距離によって、その強さ(音圧レベル)は、減衰します。 すなわち、音波は四方八方に広がる(発散)ことにより減衰する性質を持っています。この性質を音の距離減衰と呼びます。 音波は波動現象ですから、1つの音源から遠くなるにつれて伝搬する面積が広がるために音の強さ(単位面積当たりの音のエネルギー)は、弱くなっていきます。 特に、音源が点音源と見なせる場合は、自由空間中を球面上で伝搬すると考えてよくその面積は 4πr2(ここで、r は音源からの距離)ですから、音の強さは距離の2乗に反比例して減衰します。 これを逆 2乗則といいます。

図 10-1 において、点音源 P からの距離 r1、r2 における音圧レベルをそれぞれ L1L2とすると;

式10-1

式 10-1

;との関係となります。例えば、距離が 2 倍になると、6 dB だけ小さくなります。

 

イラスト(10-1 点音源からの拡散と距離減衰)

図 10-1 点音源からの拡散と距離減衰