技術レポート一覧



次数比分析とトラッキング解析
(page2)

2.回転-トラッキング解析

 

2-1 定比型トラッキング解析

回転体からの回転パルスをFFTアナライザのサンプリングクロックとして使用し、横軸を周波数ではなく回転次数で規格化したものが、前項で解説した次数比分析であり、下図aのように表示されます。 回転 – トラッキング解析のうちの定比型トラッキング解析は、この次数比分析でもとめられた次数成分のうち任意の成分を指定して、下図bの 回転速度 – スペクトル線図ように回転速度を変化させて、その次数成分のレベル変化を回転速度に応じて追従するトラキング分析であり、表示は図cのようになります。

 

図6

下図7は、騒音を1次、2次、3次、4次の定比型トラッキング分析した例です。

図7

2-2 定幅型トラッキング解析

下図8は定幅型トラッキング分析の例を示します。FFTアナライザの内部サンプリングクロックを使用し、周波数分析した3次元表示とそのデータから任意の次数成分を抽出し、作図することでトラッキング分析を行います。

図8

2-3 その他のトラッキング分析

定比型、定幅型トラッキング分析の他に、次のようなトラッキング分析があります。分析方法は定幅型と同様に行います。

 

● 定幅周波数トラッキング

内部サンプリングクロックを利用して指定された周波数成分を回転速度に応じて追従するトラッキング分析です。次数比分析ではありませんのでご注意下さい。

● オクターブトラッキング

定幅周波数トラッキングと同様ですが、1/3、1/1オクターブバンドデータの指定されたバンド成分を回転速度に応じて追従するトラッキング分析です。

 

2-4 トラッキング分析と回転変化率について

トラッキング分析を行うときは回転速度を上昇させながら、または下降させながら測定を行いますが、分析演算時間に対し回転速度の変化が速すぎるとスペクトルの波形にずれが生じ、正しい分析ができません。下図9は回転上昇時の次数分析を行った場合、回転変化率の違いによるスペクトル分析の結果を示しています。図9-aは回転変化率が小さい場合で適切に分析されています。 図9-bは回転変化率が大きい場合で、スペクトルのピークが本来の次数の位置から小さい方へずれています。図9-cは回転変化率が大変大きい場合で、ピークの裾が低い次数方向に広がっています。試験予定の回転変化で運転し、次数比分析、周波数分析データが図aのようになっているか確認後、本試験を行うことが重要です。

● 回転変化率が小さい場合


図 9-a

● 回転変化率が大きい場合


図 9-b

● 回転変化率が大変大きい場合


図 9-c

 

3.まとめ

今までご説明しましたことをトラッキング解析の主力である定比型次数トラッキングと定幅型次数トラッキングを比較してまとめてみました。

 

3-1 定比型次数トラッキングと定幅型次数トラキング

定比型次数トラッキングとは、回転体から得られる回転パルスを外部サンプリングクロックとして利用し次数比分析を実行します。その中で注目する次数成分のスペクトルレベルの変化を回転体の 回転速度の変化に対応してプロットする分析手法です。

定幅型次数トラッキングは、内部サンプリングクロックによる周波数分析を実行し、回転速度が変化する毎に、周波数レンジとその時の 回転速度から注目する次数の周波数を計算し、その該当する周波数成分のスペクトルレベルの変化を回転速度の変化に対応してプロットしていきます。

定比型トラッキング分析、次数比分析では、次数軸で見みると、回転速度に関係なく、最大分析次数、次数分解能(次数バンド幅)が一定となります。 これを周波数軸で見ると図10の左のように回転速度変化に従い最大次数の周波数、次数分解能の周波数バンド幅が変化します。この影響は、例えば振幅が一定のランダム信号を分析した場合、 回転速度が大きいほど次数成分のレベルが大きくなります。特にオーバーオールでは周波数範囲が広がりますのでこの傾向が顕著となります。図10の右にランダム信号を分析した様子を示します。

定幅型次数トラッキング分析、周波数分析では、周波数軸で見ると回転速度に関係なく、周波数レンジにより最大周波数、周波数分解能(周波数バンド幅)は一定となります。 図10と対比させて図11にこの様子を示します。回転速度が変化しても次数に対応した周波数の周波数バンド幅、オーバーオールの周波数範囲は一定であるということは、次数軸で見れば、 回転速度が低いときは次数バンド幅が広く、回転速度が大きくなるに従い次数バンド幅が狭くなることになります。言い換えると定幅型次数トラッキング分析では定比型トラッキング分析に比べ回転速度が大きくなるに従い次数成分のレベルは小さくなる傾向を持つこととなります。

ややこしくなりましたが、次数比分析か周波数分析かでそれぞれ相反するような関係があり、定比型定幅型それぞれの特徴を理解し使い分けることが必要です。

 

● 定比型次数トラッキング分析

 

600 r/min の時の100 次の周波数fは;

各次数成分の周波数帯域幅 Δf は;

同様に、1200 r/min では、になります 。

図10

 

●定幅型次数トラッキング分析

 

3000 r/min の時の 100 次の周波数 f は;

3000 r/min の時の Δorder = 1次の周波数 Δf は;

Δf = 5 Hz では となります。同様に、9000 r/min では、Δorder = 約 0.033 次になります。

 

図11

定比次数トラッキングと定幅次数トラッキングの注意点は次の通りです。

定比型次数トラッキング 定幅型次数トラッキング
  • 次数分解能は回転速度に関係なく一定である。
  • 次数成分が明確なピークを持っていないランダムノイズ的な信号の場合は回転速度が高いと周波数バンド幅(分解能)が広くなるためスペクトル数値が大きくなる傾向がある。
  • 周波数分解能は回転速度に関係なく一定である。
  • 周波数レンジが低いと定比型次数トラッキングほど回転上昇率を大きくできない。
  • 予め最高周波数を決めてから分析次数を設定しなければならない(周波数レンジを設定することで周波数の上限が制限されるため)。

 

 

<< 前ページ    目次    


eー見積もり
アプリケーション(用途例)

Copyright © ONO SOKKI CO.,LTD All Rights Reserved. | 当サイトのご利用にあたって| 個人情報保護方針