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音とそのセンサについて
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5. 音響インテンシティマイクロホンプローブ

音響インテンシティとは、音を「単位面積を単位時間あたり通過するエネルギーの流れ」として捉えるもので、その測定単位は W/m2 となります。音響インテンシティマイクロホンプローブは、複数のマイクロホンを組み込むことで、この音のエネルギーの流れを測定し、音の強さとともに流れの方向をベクトル量としてとらえることが出来るように設計されています。一般のマイクロホンでは、ある特定の場所(1点)での音の強さを表す音圧(単位:Pa )は測定可能ですが、流れの方向は測定出来ません。

音響インテンシティマイクロホンは、上に述べた特性から、音源探査や音響パワー測定に使用されます。音響インテンシティマイクロホンとして当社には、2組の音圧型マイクロホンを直線上に近接配置した一軸型( MI-6410 )と、4つのマイクロホンを正四面体の各頂点に配置した当社独自構造の3次元型( MI-6420 )があります。

5.1 一軸型プローブ < MI-6410   販売終了

・ 構造

イラスト(MI-6410 一軸型プローブの構造)

図6 一軸型プローブ<MI-6410>の構造

・原理

イラスト(MI-6410 一軸型プローブの動作原理)

図7 一軸型プローブ<MI-6410>の原理

 

この方式は、2マイクロホン法とも呼ばれます。Mic A に到達した音の波面がある時間差をおいて Mic B に達し、その時間差情報を利用して音の前後方向の判断とマイク軸への大きさ成分を計算します。

Mic A での音圧が p1t)、Mic B での音圧が p2t)である時、音圧の平均値 Pt)と、粒子速度 Vt)は次のように表されます:

式2

(2)

式3

(3)

 

この Pt)と Vt)を掛け合わせ、時間平均を取ることで、音響インテンシティを求めることが出来ます。

 
優位点
  • 測定周波数範囲の異なる2組のプローブを同軸上に配置することにより、40 Hz10 kHz までの周波数範囲を一度または同時に測定することが可能。
  • 2組のプローブを同軸上に配置しているため音響中心が一致し、測定の際に誤差を生じない。
  • プローブは固定の一本構造をとっているため、接触不良や機械的な損傷の危険が少ない。
  • 1/4 インチ径相当のマイクロホンカートリッジの採用により小口径かつシンプルな構造のため、音の流れを妨げない。
  • 専用のマイクロホンアンプと音圧位相差校正器により、使いやすく、精度の高い測定が可能である。
注意点
  • 1回の測定では音のベクトルの1成分しか求めることが出来ない。
  • 垂直方向では音響中心から測定対象への最短距離が 50 mm であり、至近距離での測定が出来ない。
  • 2ペアマイクロホンの測定周波数範囲は、それぞれ 40 Hz1 kHz400 Hz10 kHz であり、中間領域(ie; 200 Hz5 kHz )のみの測定には使いづらい。

5.2 3次元型プローブ < MI-6420   販売終了

・ 構造

イラスト(MI-6420 3次元型プローブの構造)

図8 3次元型プローブ<MI-6420>の原理

・ 原理

イラスト(MI-6420 3次元プローブの原理)

図9 3次元型プローブ<MI-6420>の構造

 

正四面体の各頂点 r1r2r3r4  の位置に無指向性の音圧マイクロホンが配置されています。正四面体の重心 r0 は音響中心であり、ここを原点としたときの xyz 軸は図のようになります。この方式のアルゴリズムは、先の 2マイクロホン法の拡張として考えられ、4つのマイクロホンの内、任意の2つのマイクロホンペア(6通り)について、2マイクロホン法を適用し、各ペア方向の音響インテンシティを求め、最後にマクロホンプローブの XYZ 座標方向の成分を計算して、3次元音響インテンシティを求めます。

 
優位点
  • 4つのマイクロホンを使用して、3次元音響インテンシティ(音の3方向成分=ベクトル)を一回の測定で求めることが出来る。
  • 4つのマイクロホンを正四面体の頂点に配置した独自構造により、空間的な対象性を持ち、音響中心が共通である。
  • 1/4インチ径のマイクロホンを細い軸の先端に配置したことで、音の流れを遮りづらくし、特に高周波数域の測定で精度が確保できる。
  • 専用のマイクロホンアンプと位相差校正器により、使いやすく・精度の高い測定が可能。
注意点
  • 3次元音響インテンシティを求めるためには、4つのマイクロホンからの信号を同時に処理できる演算処理器が必要である。
  • 最高測定周波数は 5 kHz 2 dB 誤差)。

 

6. 騒音計

6.1 騒音計とは

騒音計は、騒音レベル( LA )及び音圧レベル( LP )を測定する計測器であり、計量法にて特定計量器として指定されています。また、測定精度の違いから、JIS C 1509-1 クラス 1(計量法での「精密騒音計」に相当)及び、JIS C 1509-1 クラス 2(計量法での「普通騒音計」に相当)に仕様などが定められています。更に、統計量としての時間率騒音レベル( LX )や、等価騒音レベル( LAeq )、単発騒音暴露レベル( LAE )などの積分量を測定する機能を持った積分型騒音計があります。

(注意)

「騒音計」という用語は、JIS C 1509-1:2005 で「サウンドレベルメータ」となりました。ただし、「騒音計」も残っています。なお、計量法では「精密騒音計」と「普通騒音計」が残っています。

 

6.1.1 クラス 1(精密騒音計)とクラス 2(普通騒音計)

普通騒音計は、屋外、工場、事務所などの環境騒音測定を目的とした騒音計で、現場での計測を低価格で簡単に行なうことを目的としています。それに対して、精密騒音計は、様々な分野の騒音研究、あるいは機械装置の騒音評価を行うユーザのあらゆる計測条件にも対応できることを目的としています。両騒音計とも、その基本仕様は計量法、JIS に基づいており、その主な違いは下表のようになります。

表3-1 普通級と精密級との違い(計量法

 

精密騒音計

普通騒音計

使用周波数範囲

2012500 Hz

208000 Hz

器差

± 0.7 dB

± 1.5 dB 以下

目盛り誤差(dB
(基準レベルに対して±10 dB の範囲)

± 0.2 dB

± 0.3 dB

目盛誤差(dB
(上記以外)

± 0.4 dB

± 0.6 dB

レンジ切替誤差(dB

0.5 dB

0.7 dB

 

表3-2 クラスによる性能の違い(JIS 規格)

 

クラス 1(精密級)

クラス 2(普通級)

レベル直線性誤差(dB
(入力レベルの 10 dB 以内の変化に対して)

± 0.3± 0.6dB

± 0.5± 0.8dB

レベル直線性誤差(dB
(上記以外)

± 0.8± 1.1dB

± 1.1± 1.4dB

周波数範囲(Hz

16 16000 Hz

208000 Hz

 

(注意)

  1. カッコ内の数値は測定の拡張不確かさ(JIS 規格に規定する最大許容値)を含んだ場合。

  2. 計量法では、計量範囲最小値と自己ノイズとの差は今まで通り、以下の数値と決められています。

■普通騒音計:+6 dB  ■精密騒音計:+8 dB

 

 

6.1.2 型式承認と検定

騒音計は、法定計量器に指定されており、国の検定制度があります。計量法によれば、騒音レベルの値を取引や、証明に用いる場合、検定に合格し、有効期限5年の騒音計を使用して測定する必要があります。騒音計の検定は、財団法人 日本品質保証機構( JQA )で行っており、検定に合格した騒音計には有効期限5年を記入した合格証が貼付されます。 当社は97年9月に国内では初めて騒音計の指定製造業者指定を通産省より取得したことで、新品検定に際して、JQA に代わり、当社内での検定が可能となっています。なお、騒音計を音響センサとして利用する場合には、必ずしも検定を受けている必要はありません。

6.2 騒音計の構造

下図は、騒音計の電気回路の構造ブロック図を示します。ブロック図中、特に、AC 出力( AC out )、DC 出力( DC out )の位置関係に注意下さい。騒音計を理解し、使いこなしてゆく上でこの2つの出力の違いに注目することが重要となります。

イラスト(騒音計ブロック図)

図10 騒音計の構造

 

・マイクロホンとプリアンプ

音を正確にキャッチして、電気信号に変換するのがマイクロホンであり、マイクロホンからの高インピーダンスで微小な電気信号を、低インピーダンスの電気信号に変換するのがプリアンプです。音は、空気の疎密が交互に伝わってゆく波動現象ですので、この空気の疎密に比例した電気信号に変換するセンサとして、マイクロホンとプリアンプには感度の良いもの、周波数特性の良いものが要求されます。騒音計のマイクロホンには一般的にコンデンサ型が採用されています。コンデンサ型マイクロホンの詳細については、前ページを参照下さい。

 

・周波数補正回路

プリアンプからの電気信号をその周波数領域で重み付け( weighting )を行う回路です。重み付けには、次の3タイプがあります。

A 特性周波数重み付け( A-weighting 低周波領域と高周波領域での感度が鈍くなる特性を持っています。騒音測定では、通常この重み付けが使用されます。
   
C 特性周波数重み付け( C-weighting 比較的平坦な周波数特性を持ち、騒音計の AC 出力を録音する際や、衝撃音の測定の時に使用されます。
   
Z(または FLAT)特性周波数重み付け( Z-weighting C 特性より更に広い周波数範囲に渡って、平坦( Flat )の特性を持ち、対象音の周波数分析を行う際に使用されます。

 

(補足): Z 特性と FLAT 特性について

従来の騒音計では、周波数重み付けしないいわゆる平坦(フラット)な周波数特性を“ FLAT 特性”としていましたが、周波数範囲など具体的なその仕様は、製造メーカに任されていましたから市販されている騒音計の FLAT 特性は、実質的には統一的な仕様となっていませんでした。そこで、新規格では、新たに“ Z 特性”を定め、その周波数範囲を「10 Hz20 kHz まで平坦(フラット)」と規定しています。

 

データ(Z、C、A特性の周波数レスポンス)

図11 周波数重み付けによる周波数特性

 

・時間重み特性 F(Fast)、S(Slow)について

時間重み特性とは、指示メータ(ディジタル表示も含む)の動きに関係するものです。具体的には、実効値検波回路での平均化の時定数に相当します。この動特性(時定数)に関しては JIS C 1509 に細かく記載されています。速い動特性 F Fast:125 ms )と遅い動特性 S Slow:1 s )があり、通常、騒音の測定には、速い動特性 F Fast )が使用されます。更に、Fast を用いても衝撃音の大きさは正しく測定できないため、このような時には時間重み特性 I Impulse = 35 ms <立ち上がり>、1.5 s <立下り>)が用意されていますが、この重み特性 I Impulse )は、最近の研究では「あまり衝撃性の音の評価に適さない」ことがわかっており、IEC(及び JIS )では、規格からはずれていて、JIS C 1509-1 附属書 C(参考)となっています。それに代わって、衝撃性の騒音評価パラメータには、瞬時音圧のピーク値を採用する傾向にあります。

 

・AC 出力と DC 出力  

AC 出力は、マイクロホンで捉えた音圧に比例した電気信号を出力します。DC 出力は、AC 出力を検波・動特性回路、対数演算回路を通してレベル値( dB )に変換した信号で、騒音計の表示値に相当します。騒音計を音響センサとして使用する場合に AC 出力を利用します。騒音対策等で、対象とする騒音がどの様な周波数成分から成り立っているかが解ると効果的な対策を施すことが出来ることから、FFT アナライザやリアルタイム(オクターブ)分析器への入力信号として、またレベルレコーダへの記録用に利用されます。

 

・表示

表示部は、騒音計で設定した測定レベルレンジに合わせた信号処理を施し、音のレベルとして視覚化します。表示には、針の振れによってレベルを指示するアナログ式のものと、数値で、或いは数値とバーインジケータによってレベルを示すディジタル式のものがあります。現在ではディジタル方式が主流となってきています。下図に弊社騒音計のディジタル表示画面を例として示します。

イラスト(騒音計表示例)

図12 騒音計の測定表示例

6.3 騒音計の表示値

騒音計は音圧レベル( Lp )と騒音レベル( LA )を測定表示します。また、積分形騒音計ではこの2値の他、等価騒音レベル( LAeq )、単発暴露騒音レベル( LAE )、時間率騒音レベル( Lx )を演算表示することができます。ここでは、それぞれの表示値がどのように求められるか説明します。

 

・音圧レベル( LP )  

騒音の分野では、音波の振幅(音圧)の実効値の,基準音圧に対する比の常用対数の 20 倍として表します。単位は dB です。音圧レベルの大きい音波は強い音、小さい音波は弱い音ということが出来ます。周波数特性は Z FLAT )が使用されます。

 

・騒音レベル( LA )  

音圧レベル( LP )に A 特性重み付けを行い、騒音の大きさの尺度として用いています。単位は dB です。

 

・等価騒音レベル( Leq )  

変動する騒音を統計的に安定に表現でき、どの程度の騒音にどれくらいの時間暴露されたかを評価する量であり、一定時間内の騒音の総エネルギーの時間平均値をレベル表示した値です。最近騒音測定技術の向上や国際的動向を踏まえ、1999年4月に改定施行となった環境基準では、環境騒音評価量として等価騒音レベル( LAeq, T )が採用され、騒音評価の重要な指標となっています

 

・単発騒音暴露レベル( LAE )  

単発的または間欠的に発生する継続時間の短い騒音を測定する量として規定されています。これは、単発的に発生する騒音の全エネルギーと等しいエネルギーを持つ、継続時間 1 秒の定常音の騒音レベルに換算した値となります。

 

・時間率騒音レベル( LX

変動騒音の評価量として古くから使われ、我が国において騒音規制法や環境基準などにおける騒音の評価量として用いられてきました。ある実測時間内の変動騒音に着目した場合、その騒音レベルがあるレベルを超えている時間の合計が実測時間( t2t1 )の X % に相当するとき、その騒音レベルを X % 時間率騒音レベルと呼び、Lx で表します。

6.4 騒音の測定方法  

環境騒音についての基本的測定方法は JIS Z 8731 に定められています。JIS Z 8731 は 1957年(昭和32年)9月18日に制定されてから我国における騒音の測定・評価方法の基礎として広く使われてきました。 最近では地球環境保全の高まりから、世界的に評価基準を統一する流れになり、国際規格 ISO との整合性をとるため順次改訂が進められています。1997年の計量法の改訂ではホンから dB 単位への変更、1999年の環境アセスメント法の制定、1999年の環境基本法の L50 から LAeq 基準への改訂などがあります。 JIS Z8731 についても、1983年に続き 1999年に(国際標準化機構)ISO 1996-1/1982ISO 1996-21983を基礎として改訂されました。

6.5 騒音に関する法律  

騒音に関連する我が国の主な法律は下記のようになります。これを基にして、政令・条例が定められ、監督官庁がそれぞれ決められていますが、実際には、公害関係は、市町村の「公害課」や「市民生活課」等の窓口で、企業の労働安全衛生の関係では、各都道府県並びに国の労働基準監督署が実務を行っています。

 

環境基本法(環境基準)(環境省)
騒音規制法(環境省)
環境影響評価法<環境アセスメント法>(環境省)
消防法施行規則(総務省 消防庁)
労働安全衛生規則(厚生労働省)
大規模小売店舗立地法(経済産業省)

 

 

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