7-3 校正について

マイクロホンも含めた騒音計の校正をするためには、JIS C 1515(IEC 60942)に規定されたサウンドキャリブレータ(音響校正器)が使われます。

サウンドキャリブレータには、ピストンホンといわれている一定周期の機械振動により基準音圧を発生させる音響校正器と、圧電セラミックを振動音源とした簡易音響校正器があり、弊社ではそれぞれ SC-2500A(JIS C 1515:2020 クラス 1)、SC-2120A(JIS C 1515:2004 クラス 2)を用意しています。SC-2500A は 114 dB(1 k Hz)、SC-2120Aは 94 dB(1 k Hz)です。 測定を始める前に、サウンドキャリブレータの基準音圧を入力し、騒音計の周波数重みを FLAT または C 特性に設定して、指示値が基準音圧と同じかどうか確認します。 指示に差があるときは、一致するように調整用ボリュームで合わせます。差が 2 dB 以上あるときは何らかの異常の可能性がありますのでメーカでの点検を受けることをお勧めします。


SC-2500A
製品写真(SC-2120A簡易音響校正器)
SC-2120A

図 7-1 代表的なサウンドキャリブレータ

 

また、騒音計には CAL ボタンがあります。これは騒音計のレベルレンジをフルスケール(100 %)としてフルスケールの 1/2 = −6 dB に当たる 1000 Hz の安定した校正信号を内部で発生し、電気回路部分の動作確認を行なう機能です。日常の簡単なチェック用に、またレベルレコーダや FFT アナライザーなど外部接続機器のキャリブレーション信号として利用されています。

(注意)
  1. 新 JIS(JIS C 1509-1)では、騒音計の校正や点検(調整)の手段として JIS C 1515 に適合した音響校正器を使用した音響的な調整しか認めておりませんのでご注意ください。 内部の電気信号(1 kHz 正弦波 CAL 信号)を使った校正は、あくまで簡便な校正と理解ください。
  2. マイクロホンには高い静電圧を掛けていますので湿気による静電気の火花でマイクロホンの膜に穴を開ける危険があります。

 

7-4 型式承認と検定について

スーパーなどで商品に何 g と表示されていますが、この重さを計った秤は検定を受けたもので測定されています。取引または証明に使用する計量器については公的に担保することが求められ、計量法では「適正な計量の実施のため、計量法上の規制を課すことが必要」として「特定計量器」を指定しています。

騒音計も特定計量器に指定されており、騒音レベルの値を取引や証明に用いる場合には、検定に合格し有効期限内の騒音計を用いて測定しなければなりません。この検定制度では個々の検定を簡単に行なえるようにするため、型式承認の制度が設けられています。特定の型式の騒音計に対して、基本的に重要な事項について厳密な試験をあらかじめ行なっておき、これに合格した型式については型式承認番号が与えられ、器差検査を主とする簡単な試験で検定の合否を決める制度です。弊社の LA シリーズ騒音計は型式承認を取得していますのでこの検定を受けることができます。騒音計の検定は財団法人 日本品質保証機構(JQA)で行われており、検定に合格した騒音計には有効期限 5 年(1998 年 4 月より 5 年間に改訂)を記入した合格証が現品に貼付されます。

(注意)
  • 特定計量器の型式承認有効期間 :10 年
  • 検定有効期間 騒音計: 5 年
    検定有効期間 振動レベル計: 6 年

計量法には、新品出荷時において、優れた品質管理能力を有する製造業者についてはその製造する特定計量器に対し検定検査規則の基準に基ずく自主検査を行ない「基準適合証印」を付すことが許可され、「基準適合証印」は検定に代える事ができるという指定製造事業者制度が設けてあります。弊社はその指定を取得していますので、新品出荷品については検定を代行し合格証を貼ることができます。次ページに「基準適合証印」のサンプルを載せます。出荷後の騒音計の検定は、メーカ引取り点検調整後 JQA で検定を受けます。

なお、取引や証明に関係なく使用される社内での実験や研究などでは、弊社騒音計の製造において検定の有無による差はなく性能上まったく同等ですので、無検定であっても安心して使用することができます。

(注意)お客様で検定書が必要の場合、当社営業所 へお問い合わせください。

 

写真(騒音計基準適合済証)

図 7-3 「騒音計基準適合済証」例

【参考】:「計量法第 71 条の条件に合格した騒音計」とは

騒音関係の規制法令には、「測定は、計量法第 71 条の条件に合格した騒音計を用いて行うものとする。…」の記述があります。計量法第 71 条は次の様になっています。(一部省略)

計量法第 71 条

  1. 検定を行った特定計量器が次の各号に適合するときは、合格とする。
    (1)その構造(性能および材料の性質を含む)が経済産業省令で定める技術上の基準に適合すること。
    (2)その器差が経済産業省令で定める検定公差を超えないこと。

  2. 前項第 1 号に適合するかどうかは、経済産業省令で定める方法により定めるものとする。ただし、第 84 条(騒音計の型式承認)の表示が付された特定計量器(検定有効期限内の騒音計)は、その検定に際しては、同号の経済産業省令で定める技術上の基準に適合するものとみなす。

  3. 第 1 項第 2 号に適合するかどうかは、経済産業省令で定める方法により、第 102 条第 1 項の基準器検査に合格した計量器(基準マイクロホン)を用いて定めるものとする。

以上の条文からすると「計量法第 71 条に合格した騒音計」とは「検定書付き騒音計」が該当します。「検定なし騒音計」では第 71 条第 1 項 2 の検定公差に適合していることの証明書が無いため注意が必要です。

 

7-5 騒音計の測定可能範囲(リニアリティレンジ:直線動作範囲)

新 JIS(JIS C 1509)に適合している騒音計のレベル直線性誤差は、各周波数重み特性(A、C、Z 特性)による音圧レベルの各周波数で、下記のように規定されています(測定の拡張不確かさを考慮)。

クラス 1 の騒音計(精密騒音計) ±1.1 dB
クラス 2 の騒音計(普通騒音計) ±1.4 dB

さらに、各レベルレンジの任意の信号レベルで±10 dB 以内の変化に対しては、許容差は以下の数値となっています(測定不確かさ含む)。

クラス 1 の騒音計(精密騒音計) ±0.6 dB
クラス 2 の騒音計(普通騒音計) ±0.8 dB

 

この直線性誤差の許容範囲を超える信号が騒音計に入力されると、過大レベルまたは過小レベル(Over または Under)が表示され、測定可能範囲外であることを警告します。

騒音計の測定可能範囲(リニアリティレンジ)とは、各周波数重み特性、各レンジ、各周波数において、Over 表示も Under 表示もない動作範囲であるということができます。

カタログ記載の数値は、上記の条件により測定可能範囲が異なるため、通常は 1 kHz における直線動作範囲をリニアリティレンジの代表値として記載しています。また、取扱説明書では、周波数重み特性毎に下記の周波数における上限(Over)と下限(Under)の公称値を表として記載しています。

 

クラス 1 の騒音計(精密騒音計) 31.5 Hz、1 kHz、4 kHz、8 kHz、12.5 kHz
クラス 2 の騒音計(普通騒音計) 31.5 Hz、1 kHz、4 kHz、8 kHz

 

7-6 防風スクリーン

7-6-1 防風スクリーンの必要性

防風スクリーンは、風によってマイクロホン近傍で発生する雑音を軽減するために使用されます。理想的な防風スクリーンは、マイクロホンに装着しても音響的に大きな変化を与えず、かつ大幅な風雑音の減少効果を有するものです。

一般的な防風スクリーンは、騒音測定時に容易に着脱でき、マイクロホンのチリやゴミに対する保護と物理的な衝撃の軽減が可能な一般測定用汎用型(ほとんどの場合、球状のウレタンフォーム製)と、航空機騒音や工場騒音等で長期間連続測定に使用する、風雑音の軽減効果が大きく、雨・雪などに対しても耐えられる全天候型とに大別されます。屋外での測定の際には出来るだけ防風スクリーンの装着が望まれます。

 

7-6-2 一般測定用防風スクリーンの性能

一般測定用防風スクリーンは、ほとんどの場合ハンディタイプの騒音計に装着します。この場合、防風スクリーンは、ある程度の風雑音減少効果を保ちながら、騒音計への着脱が容易で、かつ騒音計とのデザイン上のバランスも必要となります。

防風スクリーンの風雑音減少効果とは、マイクロホンに直接風が当たったとき、その近傍で発生する雑音レベルと、防風スクリーンをマイクロホンに装着したときに発生する雑音レベルの差で表わされます。風雑音減少効果は、防風スクリーンの大きさに左右されることが判っており、スクリーンの直径が 2 倍になるとほぼ 6 dB 効果は上昇します。
当社の騒音計には、そのタイプに応じ 2 種類の防風スクリーンの内の1種類が付属しています。LA-1400A シリーズ には φ 70 mm の、また、LA-7000 シリーズには φ 90 mm の防風スクリーンで、それぞれの性能は図 7-4 の通りです。屋外の環境騒音(60 dB 以上)を測定するならば、φ 70 mm のもので風速 3 m/s、φ 90 mm のもので風速 5 m/s ぐらいまでが実用範囲です。

 

データ(騒音計防風スクリーン性能)

図 7-4 防風スクリーン性能

 

イラスト(LA-1400 シリーズに装着した防風スクリーン(イメージ))

図 7-5 騒音計に装着した防風スクリーン(イメージ)

 

7-6-3 全天候型防風スクリーンの使用方法

屋外の雪や雨など悪天候時の測定には、全天候型防風スクリーンのご使用をお勧めします。参考として、当社騒音計にオプションで用意されている全天候型防風スクリーンの組み立て図を下に示しました。なお、全天候型防風スクリーンをご使用になる際には、騒音計本体と切り離したマイクロホン部とを接続するための延長ケーブルが別途必要となります。

 

イラスト(全天候型防風スクリーンの組み立て図)

図 7-6 全天候型防風スクリーンの組み立て図