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制振材料とその性能測定について
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9. 制振性能試験法に関する規格

主な規格として、日本では、JIS K6394 やJASO M306、M329 といった規格があり、外国では、 ASTM E756、BS AU125、DIN 53440、MIL P22581、SAE J671 および国際規格としてISO 2856 がよく知られた規格である。 最近では、1992 年に米国で SAE 規格が一部改正され、日本で1994 年に制振鋼板に関するJIS G0602 が制定された。 これらの規格では、試験対象となる粘弾性材料の違いや取り扱う試験片の大きさの違いにより、制振性能を評価するための様々な試験法が提案もしくは推奨されている。 このうち、 代表的な試験法は片持ち梁法で、ASTM、DIN およびJASO 規格で採用されており、 短冊型と呼ばれる細長い長方形の試験片を使用し、基本的には半値幅を測定し制振性能を評価する方法である。 また、BS 規格のように、短冊型の試験片の両端をナイフエッジで支持する二点支持法により振動減衰率を測定する方法、MIL やSAE 規格のように、試験用パネルをインパクト加振や単一周波数加振を行って振動減衰率を測定する方法、さらに日本でよく使用される試験法とし て、試験片の中央部を正弦波加振やランダム加振を行い、駆動点等でインピーダンスを測定し制振性能を評価するインピーダンス法がある。 この他には、粘弾性材料が示す緩和現象を利用して制振性能を把握する試験装置も市販されている。 ただし、これらの装置の測定周波数範囲は百数十Hz となっている。

ASTM E756-83(米国)
  • 金属、ゴム、プラスチック、エナメル材、エポキシ複合材、木材 短冊型試験片

片持ち梁法(一端固定)→ 半値幅法 → 損失係数、弾性率

DIN 53440 (第1 〜第3 分冊)(独)
  • 制振用積層材、プラスチック
  • 短冊型試験片

片持ち梁法(一端固定)→ 半値幅法 → 損失係数、弾性率

ISO 2856(国際規格)
  • エラストマ(合成ゴム、弾性プラスチック)
  • 適宜決定

インパクト加振法、自由減衰振動法、共振法、非共振法

B.S. AU125-1966(英国)
  • 自動車ボディコーティング用制振材
  • はり状試験片(588 × 63 × 6.4)

二点支持法(両端自由)→ 振動減衰率

SAE J671(米国)
  • 制振材、アンダーボディコーティング材
  • パネル型試験片(500 × 500 × 6)

弾性支持(周辺支持)→ 振動減衰率 片持ち梁法(一端固定)→ バンド幅法 → 損失係数
(1992 年 SAE920406 にて推奨する)

MIL P-22581A(米国)
  • 制振材、プラスチックシート
  • 円形試験片(φ 76 〜φ 203、10 t)

中央吊り(周辺自由)→ 振動減衰率

JASO M306、M329(日本)
  • アンダーボディコーティング材、アスファルトシート
  • 短冊型試験片

片持ち梁法(一端固定)→ 半値幅法 → 損失係数、弾性率

JIS K6394(日本)
  • 加硫ゴム
  • 円筒形試験片

共振法、非共振法 → 荷重−たわみ線図 → 損失係数、弾性率

JIS G0602(日本)
  • 「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」
  • 両端自由はり、片持ちはりの曲げ振動に対する振動減衰特性測定試験

共振法 → 半値幅法、減衰法 → 損失係数

 

10. 制振性能の試験法

 片持ち梁法、中央加振法、二点吊り、二点支持法が代表的な損失係数試験法である。これらの試験法で使用されている試験片は、2層型( 貼り付け型)や3層型(サンドイッチ型)が多い。 ここでは、片持ち梁法と中央加振法の一般的な特徴、試験システム、試験時の誤差要因、損失係数測定結果等について示す。

イラスト(試験片の構造=単体、2層型、3層型、両面貼付型)

 

試験片の主な特徴

Oberst beam 試験片の作製が比較的簡単。
データが比較的安定。
Sandwitch beam 試験片の作製が難しい。スペーサが必要。  
共振周波数がばらつき易い。
Modified Oberst beam 試験片の作製が難しい(製作誤差が大きい)。  
データがばらつき易い。

 

 

11. 片持ち梁法

 DIN 規格、ASTM 規格、JASO 規格、JIS 規格で採用、SAE で推奨された試験法である。

 

1. 試験片の選定

 一般的には、制振材料のヤング率の大きさの違いにより、どのような試験片を使用すればよいかを決める。 これらの制振材料のヤング率と試験片の測定可能周波数帯との関係を一意的に決めることはできないが、概略的に考えると下図のようになる。

イラスト(試験片選定の概念図)

2. 片持ち梁法ブロック図例

イラスト(片持ち梁法の測定システムブロック図例)

3. 片持ち梁法の損失係数測定精度

 損失係数測定は大変デリケートな試験であり、注意深く制作した試験片を使用しても、損失係数や共振周波数がやや異なる場合が多々ある。これは、試験に使用する制振材料や基材の微妙な物性の違いや、試験片制作誤差等によると考えられる。このため、これらの誤差を極力避けるために、3本程度の試験片を使用して試験を行い、得られた損失係数や共振周波数の平均値を求める方法が有効となる。下図は、損失係数の時間変化を示す。図のように、温度を変えた直後は試験片全体が測定温度になっていないため、損失係数は安定しないことがわかる。この制振材料の場合は、約 2 時間で安定している。下図は、片持ち梁法により求めた試験片の損失係数と温度及び損失係数と周波数の関係を示す。

データ画面(損失係数の時間変化=温度約20℃から60℃に変更した場合)

 

データ画面(片持ち梁法により求めた試験片の損失係数と温度及び損失係数と周波数の関係)

4. 片持ち梁法の注意事項

1 試験片寸法は縦横比が 20:1 以上あることが望ましい。
2 接着不良。接着面の空気の混入。
接着材の厚みは 0.05 mm 以下で, 弾性率は制振材の 10 倍以上とする。
3 試験片不良。寸法精度。厚みの不均一さ。
純粋な曲げ振動だけを生じさせる。
4 固定端不良。すべり。
固定端の摩擦損失による減衰の増加、固定不良、非線型現象等の影響は、試験片の一次の振動モードに最も影響する。したがって、一次共振データは採用しないほうがよい。 固定端は確実に固定する。
5 温度管理。十分に放置時間。試験片の温度分布の不均一。
温度は ± 1℃ に調整する。
6 共振周波数測定誤差。適切なスイープ速度。
周波数は、弾性係数を計算する時に 2 乗で影響するため、± 1% の精度が必要。 非線形領域での加振をしない。(特に基材単体の場合)(線形範囲:振幅は周期的な応力と伸びが比例する範囲)
7 ダンピング測定誤差。
モードが近接しない。固定端のダンピングの影響をなくす。 非線形によるダンピング付加を避ける。
8 計算誤差。
9 受信器、加振器の調整。
電磁型受信器と電磁型加振器の距離は、電磁漏洩によるクロストークの影響をさけるために、80mm 以上間隔をあける。
(伝達関数にピークの鋭いひげが等間隔に生じる)
短い試験片の試験は, 電磁型加振器と容量型受信器を使用する圧電型の場合、ピックアッ プの質量の影響、ケーブル振動の影響に十分注意する。
10 周波数分解能の影響。
半値幅内に測定点が20 個以上あることが望ましい。

   

5. 片持ち梁法に使用する機器の選択

  • 非接触電磁加振器

非接触電磁加振器は主に片持ち梁法の時に使用されるが、構造は次のような物である。

イラスト(非接触電磁加振器の構造)

 

 コイルは比較的太い線(0.1 mm Φ 程度)を少なく巻くのが良く(1000 回程度)、これ以上巻いても直流抵抗値を増やすのとリアクタンス分が増えて、高い周波数まで加振できないので意味がない。市販のオーディオアンプを使用することを考えて直流抵抗 100 Ω 程度を目安にコイルを巻くことを目安にすると良い。この場合のリアクタンスは 20 mH 程度になると予想される。また、永久マグネットは電磁加振器の使用交流磁界内の最大値である必要があり、非接触電磁加振器の最大能力を発生させる場合、直流磁界が不足する場合が考えられ、また、小型軽量の被試験片を加振する場合、直流磁界が強すぎる場合があるので、このそれぞれの場合は永久マグネットを電磁石(コイルをもう一組巻く)にし、直流電圧をかける方法が考えられる。

 

  • 非接触電磁速度センサ

 構造的には非接触電磁加振器と全く同じである。コイルの巻き数、線材等も全く同じがよい。特にこの信号をアンプを使わずにダイレクトにFFT アナライザ等に入力する場合には、出力インピーダンスが小さい方が良く、非接触電磁加振器のところで述べたように、細い線をたくさん巻くのは無意味である。センサとして出力が速度比例型のため、高い周波数まで測定可能なため、使いやすいセンサである。ただし、まれに非接触電磁加振器と干渉を起こす場合があるので、近づけて使用する場合には注意が必要である。

 

  • 静電容量センサ

 動作原理は次の通りである。

イラスト(静電容量センサの動作原理)

 センサ−ターゲット間の精度は 0.1 % 程度と非常によいが、センサ直径(ターゲット寸法)と感度のある距離との比率が約 10:1 (1 mm のセンサ寸法・ターゲット寸法は 10 mm 程度必要)と使いにくい要素がある。 また、ターゲットが強誘電体(金属等)である必要がある。 加えて、原理的に変位センサであるために、高い周波数が測定しにくいという欠点がある。長所としては電磁加振器と干渉を起こさないことである。

 

  • 加速度センサ

 加速度センサで広く使われるのは、ピエゾ効果を利用した圧電型加速度センサである。特に高い周波数まで測定する必要がある場合は、現状では圧電型加速度センサを使う必要がある。各種振動センサの中で最も使いやすい物であるが、その重量が問題になる場合が多い。試験片と加速度センサの重量比率は、損失係数・ヤング率計測の場合は 100:1 以下であることが望ましい。 また、リード線の処理に気を使う必要があり、リード線がダンピングにならないように注意する必要がある。さらに、取付方法(接着等)の接触共振が発生するので注意を要する。 小型のセンサは感度の低い物が多く、S/N 比が悪くなる可能性がある。少なくとも電荷感度型では 1 pC/ms-2 以上、電圧感度型では 1 mV/ms-2 以上であることが望ましい。

 

  • レーザーバイブロメーター

 現状最も優れた応答センサである。ターゲット - センサ間は 100 mm 以上とれるし、変位精度は 10-11 m、速度精度は 10-6 m/s、周波数は 1 MHz 以上に達する。ターゲットが完全反射、完全透過の場合を除き、ほとんどの試料をカバーする。片持ち梁法の応答センサとして最も便利するが、中央加振法のインピーダンスヘッドの加速度センサの替わりにもなる。使用する上での注意点は、測定原理がセンサ/ターゲットの相対速度の測定であるから、センサの固定はしっかりした土台に固定する必要がある。恒温漕で使用する場合の注意点は、温度上限に注意すること。急激な温度変化による結露で測定不能になることがあるということである。レーザバイブロのもう一つの欠点は価格が高いことである。低価格化が望まれる。

 

イラスト(レーザバイブロメータの動作原理)

 

 

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