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未知に挑む社員たち

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確かな技術で音を“聴く” から“視る” へ
~音響計測用マイクロホン~

新製品のローノイズマイクロホン MI-1282M10は従来機種では実現できなかった微小音の計測を可能にした。そこで、音響計測用マイクロホンの設計担当である市川と製造担当の中野にズバリお話を伺った

マイクロホンとはどんな製品ですか?
市川

本製品は、音を電気信号に変換することで音の大きさ(圧力)や高さ(周波数)を計測するセンサーです。試作品の発生音圧測定や量産品の不良品検査といった、研究開発や生産ラインで使用されることが多く、自動車業界でいえばトランスミッションの歯車の生産ラインで異音検査に使用されています。また身近なところでは、航空機が飛行中に発する音圧が規定値以下になっているかを確認する計測にも使われています。当社では、計測できる音圧や周波数の異なるセンサーを数種類用意し、計測用途に沿った製品を提供しています。本センサーは騒音計の検出部にも組み込まれ、さまざまなシーンで活躍しています

製造ブロック 計測器製造グループ係長の中野氏と技術本部 計測技術ラボ技師の市川氏の対談風景

右:製造ブロック 計測器製造グループ 係長 中野
左:技術本部 計測技術ラボ 技師 市川

これまで設計を担当されて良かったことや苦労したことはありますか?
市川

担当になった当初の開発では、音に関わること自体が初めてという状況にも関わらず難しい技術的課題に直面し、苦労の連続でした。しかしイチから技術を見直し工夫を重ねることで無事製品化でき、苦労も良い経験になりました

マイクロホンは必要な技術の裾野がとても広く、音に関する知識だけでなくさまざまな知識を掛け合わせて設計する必要があるので、本センサ―を通じ自身のスキルアップにも繋がっていると感じます

マイク
製造に関してはいかがでしょうか?
中野

本センサーは部品が細かく非常に繊細で、音を拾う部分に少しでも傷が付くと製品になりません。また組立の調整具合によっても精度が変わってしまうため、製造工程も非常にシビアです。そのため、製造者によって精度が変わらない仕組み作りをしたり、細かい部分に気を配りながら作業しなければならない点は大変です。その反面、要求精度通りの製品が完成すると達成感がありますね

2024年も新製品が発表されましたが、今後の展望を教えてください
市川

近年は製品の静音化により騒音対策の要求が厳しくなり、マイクロホンに求められる計測領域・性能も広がっています。そこで、4月にローノイズマイクロホン MI-1282M10を発表しました。従来機種では出来なかった10dB台という微小音の計測を可能にし、新たな音の問題解決に貢献できると期待しています。今後も“今まで見えなかったものが視える”を目指し、さらなる研究開発に取り組みたいです

中野

製造現場でも日々リードタイム短縮に取り組んでいます。また協働ロボット等の新しい技術の導入により一部工程の自動化も進んでいます。今後も高品質な製品を素早く提供し続けられるよう、さらなる改善・向上を目指し取り組んでいきたいです

技術と信頼で“安全” を支える
~回転検出器~

設計担当である松木と製造担当の谷山に、回転検出器について、そして新製品の磁電式回転検出器 MP-9810について直撃した。回転検出器はなぜ産業に欠かせない存在なのだろうか?

回転検出器とはどんな製品ですか?
松木

本製品は、音を電気信号に変換することで音の大きさ(圧力)や高さ(周波数)「本製品は、回転している物体の回転速度を計測するセンサーです。当社で扱うセンサーには大きく分けて磁気式と光学式があり、物体に歯車や反射シール等を取り付けて計測を行います。主に回転体の監視に使用されることが多く、設備が安定して稼働しているかといった安全管理や、お客様の装置に組み込まれて回転速度の監視・制御を行うセンサーとして活躍しています。本センサーは計測機器の中でも低価格で決して目立つ存在ではありませんが、回転体を多数扱う産業界においては非常に重要な役割を担っています

技術本部 計測技術ラボリーダー松木氏と製造ブロック 計測器製造グループ係長谷山氏の対談風景

右:技術本部 計測技術ラボ リーダー 松木
左:製造ブロック 計測器製造グループ 係長 谷山

これまで設計を担当されて良かったことや苦労したことはありますか?
松木

本センサーはどれもライフサイクルが長く、長年磁気式の代表機種を務めてきたMP-981は約50年ほど生産を続けています
長きにわたり安定供給を維持し続けていくことは簡単なようで実は苦労も多く、部品等に変更があっても量産品に影響が出ないよう日々地道な創意工夫を重ね、また設計者も代替わりしていく中で技術伝承をしっかりと行うよう意識しています。一方で良かったこととしては、本センサーの開発経験を通じ、視野が広がったと感じることです。計測機器は仕様・性能といった数値上のスペックが重要な指標ではありますが、“どれだけ壊れにくいか”“どれだけお客様に安心して使用し続けていただけるか”といった耐久性・信頼性等の大切さも実感し、スペック以外の付加価値の重要性を学びました

センサー製造工程での回転体監視装置の製作風景
製造に関してはいかがでしょうか?
谷山

本センサーは、“回転体の監視”という安全面で非常に重要な役割を担いつつも、厳しい環境で使用されることも多い製品です。そのような環境においてもトラブルを起こさないよう、高品質な製品の安定供給を心掛け、日々製造者のスキルアップや不良品を出さない現場づくりに取り組んでいます。センサーは製造工程での作り込みが品質に影響するため大変だと感じることもありますが、担当者同士で声を掛け合い工夫しています

私はもう40年ほど本センサーの製造に携わっていますが、長年継続してお使いいただいているお客様もいらっしゃいます。当社センサーへの信頼を感じ嬉しくなりますね

2024年は新機種が発売されましたね
松木

2024年4月に、MP-981の後継機として磁電式回転検出器 MP-9810を発売しました。長年、前機種を使用し続けていただいたお客様でも問題なく置き換えられるよう、前機種との互換性は保ちつつも耐環境性を向上させています。今後も安心して使用し続けていただけるだけでなく、これまで以上に多様な環境・計測シーンに貢献できることを期待しています

“真意” を理解し“真値” を導く
~受託試験・コンサルティングサービス~

受託試験・コンサルティングサービスを担当するアイデア実現ラボ長の松本執行役員と、担当者の溝口、小曽戸にどんなサービスを提供されているかについて直撃した

受託試験・コンサルティングサービスとはどんなサービスですか?
松本

本サービスは、お客様の要望に基づいて計測や解析を実施し、その結果のデータやレポートを提供するサービスです。自動車業界を中心に、計測のプロフェッショナルとしてお客様の課題解決に最適なサービスを提供し、世にある製品の性能向上に貢献しています。また、実際に社員がユーザー側の立場に立ち得られた知見を社内にフィードバックすることで、当社製品の性能向上にも一役買っています

アイデア実現ラボの執行役員 松本と技術本部 満口

右:執行役員 アイデア実現ラボ長 松本
左:技術本部 アイデア実現ラボ 溝口

担当される中で、良かったことや苦労したことはありますか?
小曽戸

このサービスはお客様の要望の真意を理解していないと本当の意味でお役に立つことが出来ないので、そこが苦労する点でもありますし、一番工夫している点でもあります。私は音・振動に関連するコンサルティングを行っているので、『音を測りたい』『振動を測りたい』という要望を頂きます。こういった要望は単純なようで実は裏側にさまざまなストーリーがあり、その背景まで理解していないと適切なアウトプットにつなげることができません。そのため、お客様の話をじっくりと伺い、その要望の真意まで理解してから作業を進めることを常に意識しています。作業中はお客様の大事な製品を預かることもあり緊張感もありますが、他では経験できないことも多く面白い仕事だと感じています

溝口

お客様によって背景が異なることは確かにありますね。私は自動車関連の計測・解析を担当していますが、入社するまで自動車に携わったことがなかったため、学ぶことの多い日々です。しかしこの仕事を通じて技術的なスキルが身に付き、お客様に最適なサービスを提供できた時は、この仕事をして良かったと思える瞬間です

技術本部 アイデア実現ラボ 小曽戸

技術本部
アイデア実現ラボ
小曽戸

松本

お二人の話が聞けて嬉しいです。この仕事はお客様の大事な製品を扱ったり事故と隣り合わせの作業だったりと、プレッシャーの大きい職場だと思っています。責任者としては、そういった環境で仕事をするメンバーの精神的なサポートも大切にしています

技術本部 アイデア実現ラボ 小曽戸

技術本部
アイデア実現ラボ
小曽戸

技術本部 アイデア実現ラボ 溝口 作業風景
2023年からは新しいビジネスも開始されましたね
小曽戸

2023年の6月から、当社で購入したEVのベンチマーキングレポートを販売するビジネスを始めました。現状は二車種ですが、今後は順次対象車種を増やしていく予定です

松本

業界に限らず、ベンチマークは技術が進歩するためには不可欠です。レポートの販売により、これまで個々の会社で実施されていた計測・解析を当社が担うことができ、ベンチマークにかかる期間が短縮され、自動車業界全体の技術発展にも貢献していけると考えています

溝口

従来のサービスはお客様と一対一でしたが、レポート販売は一つの計測結果を複数のお客様の元に届けることができるので、より幅広いお客様の役に立てるようになったと感じています

松本

このビジネスは今後より一層、発展させていきたいですね

技術本部 アイデア実現ラボ 小曽戸
音から広がる新しい景色へ
~Sound One~

グループ会社である(株)Sound Oneはグループとしては初のクラウドサービスとなるSound Oneを手掛けています。後藤CEOと石田取締役に立ち上げ時のエピソードや今後の展望についてお話を伺いました

Sound Oneとはどんなサービスなのですか?
後藤

本サービスは、当社が得意としている“音”に“クラウドサービス”を掛け合わせたもので、クラウド上に音のデータを集めて活用していただく新しいWebアプリケーションです。一番の特長は、製品が発する音(サイン音や動作音等)を人が聞いた時にどう感じるか、という聴感評価をWeb上で実施できる聴感アンケート(Audio Test) という機能です。これまでの聴感評価は実際に一ヵ所に人を集めて実施していましたが、本サービスはWeb上で完結するため、音の評価にかかる手間や時間を削減し、且つより大勢の方に参加してもらうことができるようになりました。この機能は当社独自のもので、2023年の始めにサービスを開始して以来、製品の異音対策はもちろんのこと、世の中の”快適な音創り”に貢献しています

(株)Sound One CEO 後藤、(株)Sound One 取締役 石田

右:(株)Sound One CEO 後藤
左:(株)Sound One 取締役 石田

Sound Oneに携わって嬉しかったことや大変だったことはありますか?
石田

本ビジネスがまだ構想の段階だった際に『こんなサービスを作りたい』とお客様にお話ししたことがありましたが、その際に『いいね』と共感をいただけたことは嬉しく、また開発を進めるにあたっての支えになりました。ただ、本サービスはこれまで世になかったものなので、まだその価値を広く認知していただくことができておらず、その点ではもどかしさを感じているところでもあります

後藤

私としては、従来のさまざまな制約や固定概念に囚われない自由な発想の下で事業を進めさせてもらっているので、そういった環境を与えていただいていることには非常に感謝しています。また、最近では当社の環境が親会社にも良い影響を与えられていると感じるようにもなり、嬉しい限りです。本サービスのように新しいことに挑戦するということは責任も伴いますし、見えていなかった課題に直面することもあり苦労も多いですが、挑戦するうえでは当たり前のことだと思っています

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Sound Oneの今後の展望についてお聞かせください
後藤

“音に対する人の感じ方”といっても同じ音に対する受け止め方は人それぞれで、また音の好みというのは地域や年代によっても変わります。今までの音創りではそういった細かい部分までは対応しきれていないことが多かったと思いますが、聴感アンケートはWebを通じて世界中で聴感評価を実施できるので、例えば国別・地域別で製品の音を変える等、より深い音創りにもグローバルに貢献していけると考えています

石田

音というのは地平が広いので、これまで小野測器が得意としていた産業界だけでなく、アートやエンターテインメント等音を通じて領域を跨いでいくようなビジネスの展開もしていきたいですね

後藤

そうですね。このサービスは縦にも横にも伸びしろがあるので、成長を続けた先にはものすごく広い景色(可能性)が待っていると感じています。今後は、そういった広がり感にもぜひ期待していてください

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