

ローノイズマイクロホン&音響パワーレベル計測システム
Low-noise Microphone & Sound Power Level Measurement System
ローノイズマイクロホン&音響パワーレベル計測システム
2024年、「音」を計測・解析する計測機器として、ローノイズマイクロホン MI-1282M10とO-Solution DS-5000 音響パワーレベル計測システムをリリースしました。そこで、両製品の企画・開発担当者、及び製品を導入していただいたJQA様の担当営業に話を聞きました

(左から)
営業本部 マーケティングブロック 計測商品グループ 係長 水村 、
営業本部 マーケティングブロック 計測商品グループ 係長 伊藤
計測技術ラボ 係長 北條 、
営業本部 営業統括ブロック 首都圏営業所 係長 安田
世界トップレベルの性能を実現
マイクロホンは、音を電気信号に変換し、音の大きさや高さを計測するセンサーです。マイクロホンには“自己雑音”と呼ばれる、マイクロホン自身が発生させてしまう雑音があります。この自己雑音より小さい音は正しく計測することができないのですが、今回発売したローノイズマイクロホンは自己雑音レベルを世界トップクラスまで下げ、一般的な計測用マイクロホンでは計測が難しい10dB台という微小な音の計測を可能にしています。コロナ禍等を経て騒音対策への要求が厳しくなっている昨今、特に静音化が求められている空調機器業界や自動車業界等で活躍の場を広げています
当社が調べた限りでは、この口径(1/2インチ)のマイクロホンの中で最も自己雑音レベルが低い製品です。また、国内のローノイズマイクロホンとしては初めて“バックエレクトレット型”という構造を採用したことで、解析機器に直接つないで使用することができ、より使いやすく、導入コストも抑えられるようになりました
そうですね。私は開発担当者の一人ですが、今回の開発はタスクも多かったためマイクロホンの開発チーム一丸となって挑みました。自己雑音レベルを10dB以下まで下げるためにはこれまでの当社の技術的限界を超えていかなければならないので、物理現象の基礎的なところから改めて学び直し、一から再構築しながら進めました。またチームリーダーの発案でシミュレーションの活用という新しい手法を取り入れたことも大きなポイントになりました
ローノイズマイクロホン MI-1282M10

国内初の1/2インチバックエレクトレット型ローノイズマイクロホン。自己雑音レベル(A特性)4.5dB(Typ.)を実現し、通常の計測用マイクロホンでは計測が難しい微小な音の計測も可能にする

一般的に、電子回路の設計ではシミュレーターツールを活用することが多いのですが、今回はマイクロホンの物理現象をモデル化し、シミュレーター上で物理現象と電子回路を一体で評価できる手法を取り入れました。実際に物を作って評価する工程を減らし、シミュレーター上でパラメーターの調整を行うことができたので、今回の開発ではそれがブレイクスルーとなり良い成果につながったと思います。また、ローノイズマイクロホンは微小な音まで拾える分とても繊細なため、安定した品質で量産できる体制を実現するまでもとても苦労しました。関係各所と綿密な打ち合わせを重ね連携を取ることで実際にリリースまで辿り着くことができたので、とても嬉しく思います
開発チームは当初私が企画していた以上の性能実現を達成してくれました。今回の開発は私にとって初めて本格的に企画を担当した製品だったため、学びながら指揮を取ることも多く大変なこともありました。しかし開発チームが素晴らしい成果を出してくれ、私自身も今回の経験を通じて成長できたので、開発に挑戦して良かったと感じています
近年はさまざまな業界で静音化が進んでいるため、『もっと小さい音を精度良く計測したい』という要望が多く寄せられていました。特にそういったお客様にとても喜んでいただいています。一般的なマイクロホンと比べると高額な製品ですが、同等性能の他社品の中では価格も安いので、その点も評価していただいていますね
規格に沿った計測をより簡単にする
音響パワーレベルとは、機器から発する音を1点ではなく放射面で捉え騒音値とする指標です。機器の音は計測する場所によってその値が変わってきてしまいますが、この音響パワーレベルは測定方法が国際規格で定められているため、グローバルに通用する騒音値の指標としてプリンターや複合機等の事務機器、空調機器、家電、自動車部品等、さまざまな業界で使用されています。今回は、数年前にリリースした当社の音響振動解析システム DS-5000とO-Solutionを使用した新しいシステムとしてリリースしました
計測結果をレポートとして保存できるようになり、原因分析に役立つ機能も追加したことで、計測だけではなくその後の詳細な分析や音源位置の特定まで簡単に行えるようになりました。さらに近年はモーターなどの高い音を発する製品も増えているため、国際規格よりも高い周波数領域まで計測範囲を広げています
こちらも好評ですね。光栄なことに、日本の品質保証の要ともいえる一般財団法人日本品質保証機構(JQA)様にもローノイズマイクロホンを使用したO-Solution DS-5000 音響パワーレベル計測システムを導入していただきました。ローノイズマイクロホンをご採用いただいたことで通常のマイクロホンで計測を行うより小さい音まで評価が可能になるため、日本の品質保証の向上にも貢献でき、またご担当の方にも良い反応をいただけて嬉しい限りです
本製品の開発では、複数ある国際規格を読み解いてソフトウエアに落とし込むだけでなく、実際にお客様のところへ訪問して使い方や要望をヒアリングし、より簡単で使いやすい製品を目指しました。規格に準拠した仕様と、使い勝手に配慮したシステムづくりを並行して実現するのは大変でしたが、その苦労が良い製品につながったのだと思います。また私を含む開発メンバーも、今回の開発を通じてより規格への理解が深まりスキルのベースアップができたので、それも良かったと思っています
音響パワーレベル計測システム

複数のマイクロホンを使用して音を放射面で捉え、騒音値の評価指標とする「音響パワーレベル」を計測するシステム。国際規格に準拠した計測が簡単に実行でき、分析用のレポート出力も可能である

今回のローノイズマイクロホンの開発は静音化要求が高まっているという背景が発端となりましたが、その時代によってお客様が必要とする製品というのは変わってくるのだと思います。今後もお客様の変化するニーズをいち早くキャッチし、そこに焦点を当てた製品開発を行っていきたいと考えています
個人的には、今回の開発を通じ電子回路というスキル面で非常に多くのものを得ることができました。次の製品開発では、その得られたスキルを存分に活かしていけたらと思います
音響パワーレベルは規格で定められているので、まずは規格が改訂された場合にしっかりと対応していくことが重要です。また、計測して終わりではなく『音を下げたい』というお客様に向けて、そういった課題解決に役立つ機能も追加するなど、今後もバージョンアップしていきたいと思います
納入事例紹介
〈一般財団法人日本品質保証機構(JQA)〉
一般財団法人日本品質保証機構(JQA)は、製品・材料等の試験や認証、校正を実施されている公正・中立な第三者機関です。この度、騒音試験を実施する設備としてローノイズマイクロホンを使用したO-Solution DS-5000 音響パワーレベル計測システムを導入していただきました。
計量計測センター 計量計測部 計器検定課の振原 崇課長、平 寛技術主幹、花見 真一主査からは、「従来のマイクロホンでは自己ノイズが大きく、せっかくの無響室を活かしきれず、不確かさが大きくなっていました。今回新たに導入したシステムでは、微小な音まで正確に計測できるようになり、また使いやすさも向上しました」とのお声を頂いています。

