冷蔵庫コンプレッサ音の騒音解析

音響インテンシティ解析+モード解析(実稼動解析)

近年家電製品の静音化が進み、冷蔵庫 からの音が小さく、静かになってきました。お客様の声を設計にフィードバックし、製販一体となって静穏設計のために様々な対策が施された結果であると思います。

本例では、冷蔵庫からの発生音にフォーカスし、音響インテンシティ解析と有限要素解析を組合せた計測・解析例をご紹介します。冷蔵庫から発生している 1 kHz 弱の異音を、音響インテンシティ解析により、発生源を特定し、さらに、その発生源の性状から 有限要素解析を行い、得られた結果をベースに対策を行うまでをステップ by ステップで解説します。

ここで取り上げた計測・解析の手法・手順は他の電機製品やOA機器等様々な分野での応用が可能です。

イラスト(冷蔵庫背面含むコンプレッサ部詳細) 画面データ(冷蔵庫背面の音響インテンシティ結果)

冷蔵庫背面の音響インテンシティの結果 (120Hz〜1000Hz)

始めに、冷蔵庫背面後方 1m の音圧パワースペクトルと背面全体の音響インテンシティを測定し、対策を施すべき対象音のおおよその発生箇所とその周波数を求めます。

この例では、騒音発生箇所として、最も大きなエネルギーを発生させている冷蔵庫下部のコンプレッサ部 に対し解析・対策を行います。なお、このコンプレッサ部からの発生周波数は、そのパワースペクトルから、約 700 Hz 〜 800 Hz であることが求められています。

イラスト(3次元音響インテンシティプローブでコンプレッサ部の音響インテンシティ測定)

画像データ(コンプレッサ部の音響インテンシティマップ表示)

3次元音響インテンシティプローブでコンプレッサ部の音響インテンシティを測定

次に、ターゲットとなる周波数について、コンプレッサ部から発生する音の音響インテンシティを詳細に測定します。左図のようにコンプレッサ部に音響インテンシティ測定のためのメッシュを切り、その一つのマス毎 の音響インテンシティを求め、結果をマップ表示させます。

マップ表示結果から騒音の発生箇所を求めます。この例では、騒音は緑 - 黄色で表されている部分から発生していることが解り、また、その周波数はパワースペクトルより、 650 Hz 〜 750 Hz レンジ、すなわち対象とする周波数領域にあることも解ります。


イラスト(吸入管への加速度センサ取付位置並びにインパルスハンマでの加振位置)

イラスト(吸入管への加速度センサ取付位置並びにインパルスハンマでの加振位置)

この冷蔵庫のコンプレッサ部は、大きくコンプレッサ本体と吸入管並びに吐出管から構成されています。上のマップデータより、黄色で表されている最も高い騒音発生箇所は メッシュとマップ座標から吸入管部分となり、吸入管部分からの音が発生する原因として、最も一般的に「共振」を考えることが出来ます。

ここまでの音響インテンシティ試験により、騒音発生原因箇所は吸入管であり、その原因は共振と予想できます。以降は吸入管の共振に絞って解析を進めて行きます。

 

物体の共振状態を詳しく解析するためにはモード解析が有効です。左図に示すような機器構成により、吸入管上の各ポイント(1〜14)加振時の伝達関数を測定します。

測定した伝達関数の内、対象とする周波数領域 650 Hz 〜 750 Hz レンジで Z 方向のピーク値が一番大きい伝達関数は左図での No.10 加振点の時のもので、この時のピーク値は11次モードと、12次モードに現れています。

画面データ(測定された伝達関数)

ここで測定された伝達関数をもとに、モード解析を行ったのが下図です。

モード解析により、左図吸入管の加振点 No. 4 〜 10 の湾曲した部分に、11 次モードでは曲げ振動が、12 次モードではねじれ振動が発生していることが解ります。

 

<11 次モード>

画面データ(11次モードのアニメーション)

<12 次モード>

画面データ(12次モードのアニメーション)

イラスト(吸入管への加速度センサ取付位置並びにインパルスハンマでの加振位置)

上記は吸入管単体の自由振動時のモード解析でしたが、次に、吸入管をコンプレッサ並びに冷蔵庫側に実際に配管した状態での実稼動解析を行ってみます。

実稼動状態での基準センサ位置並びに計測ポイントは左図の通りとし、 Z 方向加速度データと実稼動解析結果データを下に示します。

モード解析結果と同様、この実稼動解析結果からも、計測ポイント No. 3 〜 8 の湾曲部で共振状態が発生していることが解ります。

画面データ(計測ポイント2のZ方向の加速度)

計測ポイント2のZ方向の加速度

画面データ(計測ポイント2のZ方向の実稼動解析)

計測ポイント2のZ方向の実稼動解析

モード解析及び実稼動解析のデータを用いて、有限要素解析 のパラメータを修正し、構造変更によるシミュレーションの精度向上を図ります。

 

<モード解析>

  • 単体の自由振動による解析
  • 境界条件は自由
  • 質量・剛性などの物性量の修正に利用される

<実稼動解析>

  • 実装状態での振動解析
  • 境界条件は弾性支持
  • 境界条件の修正に利用される

画面データ(吸入管湾曲部の対策前と後の騒音レベル)

騒音レベルデータ

 

画面データ(吸入管湾曲部の対策前と後の加速度データ)

加速度データ

以上の試験データに基ずく考察より、騒音はその発生源である吸入管の湾曲部の共振を押さえることで対策出来ることがわかります。

 

<結果>

湾曲部の長さを短縮する構造変更を行います。構造変更の前後でのデータを左に示します。データから明らかなように、この構造変更により音圧および加速度は構造変更前の10分の1程度に改善されています。

  イラスト(吸入管湾曲部の構造変更前後の外観)

機器構成

  型名 品名 備考

1

DS-3000シリーズ ESUFEEL(4ch FFTセット) ◆DS-3204 4chメインユニット
◆DS-0321 FFT解析機能
◆DS-0350 レコーディング機能
◆USB3.0 ケーブル(2 m)

2

DS-0371 1ch 信号出力モジュール(DS-3000内蔵)  

3

CF-0610 SIマイクロホンアンプ  

4

MI-6420 3次元音響インテンシティプローブ  

5

MI-0620 音圧位相差校正器 MI-6420用音圧位相差校正器

6

GK-3100 インパルスハンマキット アンプを含む

7

NP-3560B 3軸加速度検出器 超小型3軸

8

DS-0321 汎用FFT解析ソフト  

9

DS-0225A 3次元音響インテンシティ測定ソフトウエア  

10

WS-7340 実験的モード解析システムソフトウェア(ME'scope VES)  

測定事例

電気製品
OA機器
その他騒音・振動が絡み合う複雑系 等

ポイント

 

  • 音響インテンシティ解析を用いて音源を探査し、振動対策により異音低減を行う。振動・騒音の連成問題に向いている。
  • モード解析、実稼動解析を用いて有限要素法のモデルを修正することで、精度の高い構造変更を可能にする。
  • モード解析、実稼動解析データからでも対策は可能である。

小野測器では、本アプリケーションによる測定を、音響・振動に精通したコンサルティンググループで承っております。

詳しくはこちらのページを参照下さい。

最終更新日:2014/07/08



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