お客様の声
小型高剛性トルク検出器RHシリーズの活用事例
モーターで発生する「鉄損」を最小化するために特注モーターベンチを使用しメカニズムを究明
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 様

組織紹介

東京大学 大学院新領域創成科学研究科
新たな学問領域を創出することがミッション
東京大学 大学院新領域創成科学研究科は1998年に設置されました。「学融合」という概念で新しい学問領域を創出することを目指して新設された、修士・博士課程のみの大学院です。約200名の教員、約1600名の大学院学生が在籍しています。今回は東京大学柏キャンパスでお話を伺いました。
課題
モーターの宿命である「鉄損」を最小化するために
東京大学 大学院新領域創成科学研究科の先端エネルギー工学専攻において現在博士課程の秋月海輝氏は、モーターで発生する損失の一種である、「鉄損」を最小化するための研究を行っています。
「三相ACモーターは産業機器に広く使用されており、既に確立されているイメージがあります。さらなる高効率運転を達成するにあたって、鉄損は考慮されるべき損失の一種でありますが、直接測定が困難であるため、詳細なメカニズムがわかりませんでした。鉄損を下げることができたとしても、原因がわからないから許容するしかないという認識でした。なので、実際それを言及している論文は少ないのです」
鉄損のメカニズムを解明し、適切に制御できれば、たとえコンマ1%効率が上がっただけでも世界に与えるインパクトがとても大きいのです。
「一般的にモーターは空間高調波が原因となって一般的な制御だときれいな正弦波の電流を流すことができないことが知られていますが、その空間高調波を制御で抑制した時に、正弦波の電流を流すことができ、鉄損が下げられるということを確認しています」

当社で組み合わせた特注モーターベンチ(写真左)とダイキン工業株式会社が試作した鉄損研究用のモーター(写真右)
秋月氏の研究では、三相ACモーターのステーターの部分に溝を彫りそこにコイルを組み込み、電磁鋼板に発生する鉄損を確認しています。磁気現象がどうなっているか常に確認しながら評価しています。
「三相ACモーターのUVW(低圧側巻線)のうち、三相すべては難しいので一相だけで試験しています。いずれは三相すべて研究することを検討しています」

先端エネルギー工学専攻 博士課程 秋月海輝氏
成果
高い精度と応答性で研究をフォロー
この鉄損を正確に計測するために、当社は希望の仕様を伺い小型高剛性トルク検出器RHシリーズと制御用モーターを組み合わせた特注モーターベンチを開発、お納めしました。
特任講師の藤田稔之氏に、当社製品を選んだ理由を聞きました。
「2022年に導入しました。御社を始め何社か比較をした際、アフターケア、実績含め検討し、御社の特注モーターベンチに決めました。精度と応答性が素晴らしいです」

先端エネルギー工学専攻 藤田稔之特任講師
日夜、本製品を使用している秋月氏は語ります。
「主鉄損の評価を行うために普段は使わせていただいています。トルクは最大で1.5 N·mくらい。回転速度は最大で6000 r/minくらい。今は3000 r/minくらいで計測しています。鉄損の計測は精度が高ければ高いほど嬉しいです。また、パワーメーターにつなげたりしながら電力でも評価をしています」
お客様の声
世界的に見ても、現在進行形で鉄損をテーマとした研究者が珍しいとのことですが、秋月氏の挑戦は続きます。
「一般的な制御に比べて、正弦波になるべく近づける制御を行い、鉄損の低減効果を比較してみました。パワーメーターでも、私が使っているモデルの直接計測でも確認することができました。また、最近では、電流のピーク部分が鉄損に影響しているのではないか?という仮説を立てて研究しています」
今後について
「トルクリップルも確認したいと思っています。たとえば鉄損を低減させるために、ある制御を行いたいと思っても、それがトルクリップルを引き起こしてしまう可能性もあります。それを評価していきたいと思っています」 と、秋月氏。
鉄損のメカニズムを完全に解明することができ、モーターの効率が向上すれば、持続可能な社会への貢献は凄まじいものとなります。
当社は引き続き、前人未到の挑戦を続ける技術者と寄り添い、チャレンジのお力添えをさせていただきます。

写真左から藤田氏、秋月氏、本製品を担当した小野測器 島崎導康、原弘毅、岩井真澄
導入ソリューション
今回のケースは当社製小型高剛性トルク検出器RHシリーズと制御用モーターを組み合わせた特注モーターベンチをお納めしました。このようにお客様のニーズに応じた試験システムを構築することが可能です。自動車や家電、モビリティ、発電、医療など幅広い分野においてお客様の課題解決に貢献しています。

最終更新日:2025/02/26