12. 中央加振法

この試験法は、日本では別名機械インピーダンス法ともよく呼ばれ、前述の制振鋼板のJIS 規格で採用されているが、欧州や米国では、こういう試験法は一般的ではない。 下図上は、片持ち梁法と同様、日本で一般的な中央加振法の損失係数測定システムを示す。

 

イラスト(中央加振法での損失係数測定システムブロック図例)

なお、米国でインピーダンス法というと、次図に示すようにブロック状の制振材料を用いてインピーダンスを測定して損失係数を求める方法をさしている。

イラスト(インピーダンス法による損失係数測定)

最近では、SAE 920406 に中央加振法が紹介されている。

1. 中央加振法の特徴

* 長所

  • 高い周波数帯まで測定可能。

  • 片持ち梁法に比較して、試験片の寸法の自由度が高い。

 

* 短所

  • 試験装置が複雑。

  • 支持部の影響が不明。

 

* 試験片

  • 短冊状、ブロック状。

 

* 試験手順

  • サインまたはランダム加振、サイン加振のスイープはゆっくり。

  • 応答は、周波数応答解析器、FFT アナライザー、レベルレコーダに記録。周波数分解能、トランケーション、読み取り誤差等に注意

 

* 試験時の仮定、注意

  • 試験片寸法は縦横比が 20:1 以上あることが望ましい。

  • 試験は線型範囲内で実施。加振振幅に注意。目視で振動しているのがみえない程度が望ましい。

  • 加振力は、常に一定。

  • 曲げ加振がねじり加振にならないよう注意。

  • 測定は、共振周波数付近に限定すべき。→ fc / 10 の範囲
    半値幅内に、測定ポイントが 20 点以上あることが望ましい。

  • ナイフエッジの接着幅は理想的には“零”が良いが、試料長の 1/200 以下(100 mm の試験片では 0.5mm 以下)が望ましい。

  • ロードセルのマスキャンセル。
    試験片の損失係数が 0.03 以下になるとマスキャンセルの有無の影響が大きくなる。

  • ズーム解析は必ず実施する。
    試験片の損失係数が 0.03 以下になるとズーム解析の有無の影響が極端に大きくなる。

2. インピーダンスヘッド

構造的には荷重検出器と加速度検出器の 2 組のセンサーを 1 つに組み込んだものと考えて良い。 中央加振法用の検出器としてなくてはならないものである。加振器の上に固定しインピーダンスヘッドを介して測定試料を加振し、その加振点インピーダンスを測定する。 インピーダンスヘッドは恒温漕の中に入れることを考慮して、電荷感度型が望ましい。 力センサー・加速度センサーの感度は被試験材料の重量が高々 100 g 程度であること、加振力は 高々 10 N 程度であることを考慮して、それぞれ 100 pC/N 以上、1 pC/ms-2 以上であることが望 ましい。 電圧感度型を使用する場合は、使用温度上限に注意をし、力センサー・加速度センサーの感度は それぞれ 100 mV/N 以上、1 mV/ms-2 以上であることが望ましい。 また倒れモードが発生することがあるので、インピーダンスヘッドの高さはなるべく低い方が良く、前後左右のバランスを考えてリード線の引き出しは対称で、コネクタの短い物が望ましい。

イラスト(インピーダンスヘッドの構造)

3. 中央加振法の共振、反共振

中央加振法において、インピーダンス(F〔力〕/ V〔速度〕)を測定すると、下図に示すよう に、共振周波数と反共振周波数が交互にあらわれる。共振周波数では加振力は大変小さく、試験片は大きく振動しているという状態であり、一方、反共振周波数では加振力は大きいが、試験片はほとんど振動していないという状態にある。

イラスト(中央加振法での共振周波数と反共振周波数の現れ方概念図)

 

 振動モードをみると、次図に示すようになる。このように、共振周波数と反共振周波数では、振動モードは全く異なっている。

 

イラスト(試験法と振動モードの関係概念図)

 

なお、中央加振の反共振の例えば2次の中央位置は、二点吊りの2次の共振のモードは境界条件が異なり、似ているようでも全く違うものであり、片持ちの倍の長さの共振モードと同じ境界条件である。

 

イラスト(中央加振の反共振の2次振動モードと二点吊りの2次の共振のモードおよび片持ち梁での2次の共振モード)

 

下図は、制振鋼板の損失係数測定結果であり、試験片の長さと試験温度が異なる場合を表している。 図のように、共振周波数と反共振周波数では、異なることがわかる。

 

データ画面(中央加振法の共振、反共振周波数で測定した制振鋼板の損失係数1)

 

データ画面(中央加振法の共振、反共振周波数で測定した制振鋼板の損失係数2)

 

図のように周波数依存性の右上がりのものは反共振側が大きく、右下がりのものは共振側が大きく測定される。 また、2 層型(Oberst beam) にはこの現象は見られない。

4.中央加振法の誤差要因

  1. 試験片製作上の問題 → 物性の不揃い、寸法誤差、接着不良による

  2. 接着材の種類 → 接着材の厚さに注意、温度変化に鈍感なものがある

  3. 温度制御 → 試験片内の温度分布の均一性に留意

  4. 解析器の誤差 → 応答信号のノイズ除去、スイープ速度等

  5. 支持部のエネルギーロスを小さくする必要がある