SoundPLAN® による風車音の予測計算

地形や気象を考慮した予測計算

概要

環境騒音予測ソフトウェア SoundPLAN® は、道路、鉄道、工場、建設工事、大規模小売店舗等、様々な騒音源を対象とした騒音予測手法を導入し、環境アセスメントのための予測計算において成果をあげています。本稿では、SoundPLAN® の新たなアプリケーションとして活用され始めた風力発電施設からの騒音予測計算を紹介いたします

環境アセスメントにおける騒音予測では、主に実用的な方法として音の干渉性を考慮しない「幾何音響」的手法が用いられます。日本では、道路、鉄道、建設工事や大規模小売店舗から発生する騒音等、予測対象ごとに騒音予測手法が発表され、使用されております。 幾何音響的手法で考慮される伝搬計算のイメージを 図1 に示します。

幾何音響による手法では一般的に、騒音源が発生する騒音の大きさを「音響パワーレベル」で与え、騒音が伝搬する際の減衰量を求め、予測・評価したいポイントにおいてどのくらいの音の大きさになるかを推定します。風車音に関しては、これまでの環境アセスメントでは距離減衰と空気が音を吸収する効果を考慮した予測計算手法が用いられてきましたが、現在世の中で使用可能な予測手法を用いると、複雑な地形による遮蔽の影響や、風向・風速が音の伝搬に及ぼす影響を考慮した計算を行うことも可能です。ここでは、この複雑な地形の上に設置される風車を対象とした場合の、SoundPLAN® における予測計算作業のステップをご紹介いたします。

イラスト(騒音の伝搬経路のイメージ)

図1 騒音の伝搬経路のイメージ


1.予測計算に用いる地形データ

陸上の、特に山間部に建設される風力発電施設は複雑な地形の上に設置されます。そこで、風車音の予測計算を行って評価する範囲の詳細な地形データを使用すると、評価点の地上からの高さや、主な騒音源となる風車から評価点までの距離を求めることができます。さらに、風車位置から評価点までの間に地形の起伏があり、評価点から風車を見通せない場合には、その遮蔽効果を求める計算にも地形データを利用することができます。

 

 図2 に、地形の起伏がある地域に風車が設置されている様子を示します。グレーの線で表現されたこの地形は、GISソフトウェア等で使用されている、市販の数値地図を基にしています(風車の形状図はCADで描いたものを別途インポートしたものです)。数値地図には様々な形式のデータがあり、Webサイトで公開されている無償のものや有償のものもありますので、予測計算を行う際には、予測計算の対象とする範囲の地形データをどのような形式のデータで入手できるか、を調査・検討するところから始まります。

SoundPLAN® は下記のファイル形式に対応しています。いずれも、点、線(3Dポリライン)、面(3Dポリゴン)のデータで作成されたものをインポートして使用することができます。

 

・DXF形式 (点/線/面) (CADで作成された地形データも使用可能)
・シェープファイル形式 (点/線/面)
・ESRI ASCII Grid 形式 (点)
・その他、SoundPLAN® 指定のテキスト形式 (点/線/面)


※市販されている数値地図は、参照系(世界測地系、または日本測地系)、および平面直角座標系(日本を19の地域に分け、それぞれの地域に設定された原点からの距離で定義する座標系)をご指定してご購入ください。

ドアロック音の評価

図2 風車が設置される地域の地形データの例
(地形データ:北海道地図(株)様販売「GISMAP Terrain」)

SoundPLAN® では、この地形データを SoundPLAN® で地形として認識できるオブジェクトに変換した後、「ディジタルグラウンドモデル(以下、DGM と称します)」を計算し、複数の標高点ポイントによって構成される斜面を計算していただきます。この計算結果を用いることによって、マウスで入力した点の標高値が自動的に認識されるようになりますので、建物や防音壁等の入力が大変やりやすくなります。


風車音の音源の設定

一般的に風車から発生する音は、ブレードが回転するときに発生する風切音と、発電機部分の機械音が支配的です。風車は大型のものになるとロータの半径が 50 m を超えるものもあり、本来、音源としての寸法や風切音が発生する箇所を定義することが難しいものですが、一般的に風車は民家から数百m離れた位置に計画されることが多いので、環境アセスメントの実務においては、風車音を点音源として、立地候補地点上空の風車のハブ位置に設定することが多いです。

 SoundPLAN® では、騒音源を点音源、線音源、面音源で設定することができます。その内の点音源を使用して風車のハブ位置に入力し、これに風車の音響パワーレベルを与えます。 図3 に、風車立地候補地点のハブ位置に入力した点音源の様子、およびその他予測計算のために入力した予測点、建物(反射/回折が計算されます)の配置を示します。点音源には、図4で示すような音響パワーレベルデータを与えました。音響パワーレベルは1/1オクターブ、または1/3オクターブバンドで定義することができます。 音響パワーレベルのデータは、一般的には風車メーカ様から入手可能なデータや、JIS C 1400-11(IEC 61400-11)に基づいて測定された値を用いることができます。


図3 計算対象の地形および風車音源等の配置

 

図4 風車音の音響パワーレベルの設定


3. 伝搬計算

SoundPLAN® には、日本で用いられている騒音予測手法だけでなく、諸外国の様々な予測手法が導入されています。
国際的に広く用いられ、風車音の予測計算にも広く使用されている 「ISO 9613-2」、日本音響学会から発表された、建設工事騒音のための予測手法 「ASJ CN-Model 2007」 を基礎とした手法、さらに、風向・風速による音の伝搬への影響を考慮可能な 「Nord2000」 など、業務内容や検討項目に合わせて適切な予測手法をご使用いただくことができます。
従来の環境アセスメントでは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、 「NEDO」 と称します)から発表された「風力発電ガイドブック」および「風力発電のための環境影響評価マニュアル」などに記述される予測手法が広く使用されてきました。この予測手法は、距離減衰と空気吸収のみを考慮するもので、回折に伴う減衰や反射音の寄与、地表面の影響等については記述されておりません。SoundPLAN® では、上記の予測手法を用いることにより、回折や反射、地表面の影響を見込んだ、より実際の状況に合った予測計算、さらに、風の条件によっては予測評価ポイントにおいて到達音圧レベルがどのくらい変動するのか、などより詳細な検討を行うことができます。

 

図5 日本の予測手法による風車音の伝搬計算結果の例

 図5 に、NEDO から発表された予測手法に記述される、距離減衰のみの手法で計算された結果と、 「ASJ CN-Model 2007」 を基礎とした手法で計算した結果の比較を示します。距離減衰のみの手法では地形による遮蔽が考慮されていない分布となります。一方、ASJ CN-Model 2007 を基礎とした手法による計算結果は,地形の起伏による遮蔽が考慮され,これにより風車を見通せない位置では到達する音が小さくなる可能性があることがわかります。予測点において数値で示した到達音圧レベルを見ると、建物を背後にもつ予測点において、 ASJ CN-Model 2007 を基礎とした手法では建物からの反射により、距離減衰のみの手法による結果よりも 3 dB 大きくなっています。一方、風車を見通せない位置の予測点では、ASJ CN-Model 2007 を基礎とした手法では地形の遮蔽効果により、距離減衰のみの手法による結果よりも 13 dB 小さくなります。このように、地形や構造物による影響を反映させることにより、過度に安全側の予測になることなく、且つ騒音が大きくなる可能性がある要因を探ることが可能です。

  実例として、15基の風車が設置された風力発電施設から発生する風車音の伝搬計算例を示します。地面の起伏は、50 m×50 m 間隔の標高点データから SoundPLAN® 上でDGMを計算して作成しました。図6 は、距離減衰と空気吸収のみを考慮した予測手法で計算された風車音の伝搬計算結果です。図7は、ASJ CN-Model 2007 を基礎とした予測手法で計算された伝搬計算結果です。前述の比較でもご紹介しましたように、ASJ CN-Model 2007 を基礎とした手法を用いると、地形の起伏によって音が届きにくくなる範囲を確認することができます。

 さらに、風向・風速の影響を考慮可能な Nord2000 を用いて計算された例を 図8 に示します。一般的に、音は風上側には届きにくく、風下側には届きやすい性質があります。ここでは北(図の上から下の向き)から 10 m/s の風が吹く場合の予測結果を示しており、風下である南側に大きく伝搬し、北側には伝搬しにくくなる可能性があることがわかります。その影響は地形によって音源を見通せない範囲において大きくなります。

図6 距離減衰と空気吸収のみを考慮した手法による伝搬計算例

図7 ASJ CN-Model 2007を基礎とした手法による伝搬計算例

図8 Nord2000による伝搬計算例(北からの風10 m/s)

SoundPLAN® で計算された音圧レベルのコンターは、シェープファイル形式でエクスポートすることができますので、これをGISソフトウェア上でも表示することができます。図9は、シェープファイル形式でエクスポートしたコンターのポリゴンを、GISソフトウェア 「ArcGIS 10.2 for Dektop」(ESRIジャパン株式会社) にインポートして表示した例です。このように、GISソフトウェアで風車の位置情報や標高データ等が管理されている場合、SoundPLAN® で計算された結果であれば、これをGIS上で一緒に表示させて管理することも可能になります。

図9 GISソフトウェア「ArcGIS 10.2 for Desktop」上での計算結果表示
(Nord2000、無風状態)

風車音の適切な予測を行うには、国内外を問わず、現在得られている知見で実測値との対応を検証していくことが必要であり、地形や気象による影響の検討を行うことはできる状況です。さらにその結果をわかりやすい形で環境影響評価の場面で共有することがスムーズな事業認可にもつながります。ただし、ここでご紹介する予測技術は当然のことながら風車音の予測に対する最終的なソリューションではありません。風車音の予測技術は日本の風力発電施設から発生する音の評価方針に則した技術として確立されることが望ましく、 「SoundPLAN®」 がその過程における一助となれば幸いです。


ソフトウェア構成

 工業騒音スタートキット
1 SY-0110 地形情報入力ソフト
・点、線、面で様々な騒音源を設定することが可能
・ISO 9613、大規模小売店舗から発生する騒音の予測計算手法、建設工事騒音の予測手法 ASJ CN-Model 2007 等
・特定ポイントの計算、および水平面音圧レベル分布の計算が可能
SY-0123 工業騒音の伝搬計算ソフト
SY-0137 音圧レベル分布表示ソフト
2 SY-0133 垂直断面の音圧レベル分布表示ソフト
・任意
3 SY-0141 グラフィック高機能出力ツール
・結果出力において様々なシンボルを用いることが可能
・Google Earth® の画像を使用することが可能
4 SY-0144 3次元表示ツール  
5 SY-0147 シェープファイル変換
・GISソフトウェアで使用される「シェープファイル」形式のデータをインポートすることが可能

ポイント

地形の起伏を定義するため、どのようなデータが入手可能か。
風車音の音響パワーレベルの設定
地形による遮蔽、および風況による騒音伝搬への影響を考慮するため、適切な騒音予測手法を選択する。

小野測器では、本アプリケーションによる測定を、音響・振動に精通したコンサルティンググループで承っております。

詳しくはこちらのページを参照下さい。

最終更新日:2014/01/9



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