騒音計を利用した音の効果的低減法
音響インテンシティ手法を使用せず、騒音計(またはマイクロホン)を使用して音源からの音圧レベルを測定し、その測定値をマッピングすることで、騒音の発生源並びにその分布を求め 、簡易的に音の効果的低減を図る方法を紹介します。
通常、騒音の効果的低減のためには、音源位置の推定や、音源からの放射量、測定面を通過していく音響エネルギーの方向などを求める音響インテンシティ手法が使用されますが、特殊な音響インテンシティプローブや専用ソフトウェアを使用するため、 現場で簡便に測定・解析することは大変でした。
本例は、「会議室に設置してある自動販売機のから発生する騒音が大きく、室内の騒音環境に影響を及ぼしているということで、騒音計、およびFFTアナライザーを用いて自販機の騒音測定を行い、騒音の発生源を探る」という状況を取り上げています。 なお、測定値のマッピングのために、表計算ソフトウェア Excelと、O-Chart「グラフ作成ツール」の2種類を利用 した結果を示します。
機器構成
型名 | 品名 | 備考 | |
---|---|---|---|
1 |
CF-9200 | ポータブルFFTアナライザー | 現場での機動的な計測が可能 |
2 |
LA-7500 | 高感度精密騒音計 | MIシリーズマイクロホンでも可 |
3 |
O-Chart | グラフ作成ツール | グラフおよびレポート作成用のアプリケーションソフトウェア |
測定方法
1. 測定する自販機の前面を 8 (H) × 5 (W) ポイントでメッシュをきり、各々のポイント(計 40 ポイント)音圧を騒音計にて測定します。この時、自販機前面と騒音計のクリアランスは約 2 cm と極力近接させます。
2. 騒音計の AC 出力を CF-9200 等の FFTアナライザーに入力し、各ポント5秒間のパワースペクトル加算平均を行います。
ここでは、以下の条件設定を行っています:
・周波数レンジ:800 Hz
・ウィンドウ関数:ハニング
周波数レンジを 800 Hz と設定していますが、これは今回の場合 800 Hz 以上の周波数には特徴的なピークもなく、かつレベルも低いことによります。
パワースペクトルの周波数特性から音圧の高い特徴的な成分を抽出します。ここでは、右図のように、100、144、200、441、636Hz、並びにオーバオール
値(800 Hzまでの)に注目します。
CF-9200 特徴的周波数成分の各ポイントの音圧レベルをテキストファイルで書き出します。
上記データはオーバオール値が一番高い
ポイント(OverAll Y: 58.21dB)のパワースペクトル
3. 次にExcelのグラフ機能(等高線)または、 O-Chart を使用して各周波数成分毎の音圧マップを作成していきます。
右に、周波数成分 800 Hz までのオーバオール音圧レベルリストを参考として掲げます。
54.74 | 54.04 | 53.90 | 53.90 | 53.10 |
55.29 | 55.69 | 55.59 | 55.35 | 54.02 |
55.62 | 55.84 | 55.77 | 55.51 | 54.26 |
56.55 | 55.50 | 55.50 | 54.91 | 54.62 |
55.88 | 56.08 | 55.73 | 55.23 | 53.95 |
56.28 | 56.59 | 56.60 | 55.52 | 53.85 |
57.37 | 58.21 | 57.33 | 56.03 | 54.23 |
58.14 | 57.84 | 57.27 | 55.77 | 53.90 |
(単位:dB)
解析データ例
オーバオール値(800 Hz までの)の音圧マップ
全体の騒音レベル(800 Hz までのオーバーオール)の音圧マップです。この音圧マップから、自販機前面左下部 が最も音圧レベルが高く、騒音源となっていることが認められます。
Excel
O-Chart
100 Hz の音圧マップ
左下部の音源から放射状に音圧が伝わっていることが分かります。
Excel
O-Chart
144 Hz の音圧マップ
左下部の音源は一致してますが、中央上部にも音源がみられます。位置的にはアクリル板で覆われているポイントであり、共振の可能性も考えられます。
Excel
O-Chart
200 Hz の音圧マップ
音源は左下部に見られますが、音圧が高い所が中央左、右上部にも見られます。中央左は冷たい飲物を提供している部分であり保冷機構と関連の可能性が考えられます。
Excel
O-Chart
441 Hz の音圧マップ
左下部の音源とは無相関の音圧マップを呈してます。音源の位置としてはコイン投入部でありインバーターの騒音とは無関係と思われます。 個別の対策が必要と考えられます。
Excel
O-Chart
636 Hz の音圧マップ
左下部と中央左に音源が見られます。音圧マップから中央左の方が広い音源となっています。200 Hz と同様 、中央左は保冷機構と関連関連の可能性が考えられます。
Excel
O-Chart
※上記 O-Chart のコンター図は透明度を 40% に設定しています。
コンターの透明度設定は O-Chart の Ver1.10 より実装されます。
ポイント
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