無負荷状態でシャフトが回転していても、検出器と表示器が持つ周波数特性と、検出器の摩擦トルクにより、トルク表示器に数字が表れることがあります。この偏差を補正し精度のよい測定を可能にするのが N-0 補正です。
出荷時にはマッチング調整として、抵抗など電気部品を使った調整を行っています。FACTOR(位相差 -トルク比例係数)、N−0 特性、総合精度の確認を行い、それぞれの値を記入した試験成績書を添付しています。なお、N−0 特性補正 OFF 時の精度はトルク検出器定格トルクの±0.5 %(MD シリーズ トルク検出器を除く)、N−0 特性補正 ON 時の精度は ±0.2 %になります。
N−0 特性はトルク検出器単体のほかに、測定機構に減速器など機械的負荷がある場合はこの機械的ロス(トルク)も回転速度により変わります。トルク検出器単体の N−0 特性のほかに、これらを含めた N−0 特性の測定を行い、補正をすることでより精度よく測定することができます。また、N−0 特性は信号ケーブルの種類や長さにより変わりますので、規定の専用ケーブルを使用いただく必要があります。
N−0 特性の測定方法は、無負荷としたい点のカップリングをはずし、無負荷状態とします。トルク検出器単体の場合は検出器負荷側のカップリングをはずします。次に、駆動側より検出器を回転させ、回転速度に対するトルク表示値を記録します。CW/CCW それぞれ測定します。この値を N−0 特性補正機能に設定することにより、回転にかかわりなく無負荷時の表示がゼロになるよう補正します。TSシリーズ表示器で回転速度の測定が必要になりますのでご注意ください。操作についてはTSシリーズ取扱説明書「N−0 特性補正機能」を参照ください。
(N−0 補正の設定例)
CW 方向の N-0 特性を測定します。下記のような表を用意し、無負荷状態で検出軸をモーターなどで回転させて各回転速度ごとのトルク表示値を記録します。
≪注意≫
カウント欄にはゼロ値と同様に表示値の小数点を無視した数字を記入します。回転速度も表示値の小数点を無視した数字です。
回転速度 (r/min) |
0 | 500 | 1000 | 2000 | 3000 | 4000 | 5000 | 6000 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カウント | -10 | 0 | 5 | 0 | -5 | -5 | -5 |
(注)カウントとは、例えばトルク表示値が 34.56 Nm では、3456 がカウントになります。 |
つぎに、横軸を回転速度、縦軸を「カウント値」にして作図し、「補正」ポイントを決めます。
ポイント | No. 1 | No. 2 | No. 3 | No. 4 |
---|---|---|---|---|
回転速度(r/min)) | 500 | 1800 | 4000 | 6000 |
補正値 | -8 | +6 | -5 | -5 |
−−−−(破線)のような周波数特性を持っていると考えられます。補正点4ポイントで直線近似すると、No.1 ~ No.4 を選択できます。上図の場合、変化の大きい 2000 r/min 付近をさらに細かくデータを取ると、細かく補正することができます。
補正点はTS-2700演算表示器では最大5点、TS-3200演算表示器では最大10点です。なお、旧TSシリーズ演算表示器には N−0 補正機能の無いタイプがありますので、取扱説明書でご確認ください。