測定対象物とレーザードップラー振動計は、非接触な関係にあります。これは測定対象物とセンサーが暗振動(バックグランド・ノイズ)の影響を別々に受けると言う事です。
この暗振動の周波数は低いものの変位的には意外に大きく、測定対象の振動周波数が高く、微小変位の対象物を測る場合など、暗振動の振幅に表示器や解析器のダイナミックレンジを食われてしまい、精度や分解能を出す事が出来なくなります。
|
■暗振動が大きい時は「速度」が有効
暗振動が大きく、FFTアナライザーやオシロスコープの電圧レンジを上げても、目的の振幅波形が暗振動の波形に埋もれて観測出来ない場合は、「変位」出力による観測より「速度」出力による観測を薦めます。「速度」で計測を行っても積分処理で変位に変換する事が可能です。
「速度」で測るメリットは暗振動の影響を受けにくい事です。これは、暗振動の変位は大きいものの、周波数が低い、つまり速度が低いからです。「速度」での計測は、観測する周波数が高い程有利になります。
例えば、超音波溶接用の超音波ホーンの計測を行う場合;
周波数 | 変位出力 | 速度出力 | |
---|---|---|---|
暗振動 | 5Hz(ピーク) | 500μm(片振幅) | 約16mm/s |
超音波ホーン | 60kHz(正弦波) | 1μm(片振幅) | 約380mm/s |
暗振動と超音波ホーンの振動を比較すると、変位だと 500 倍の差があり、超音波ホーンの変位は大きな暗振動に重畳される形で変位は出力されます。解析器のレンジはこの暗振動に合わせる事になり、ホーンの微小変位を精度良く解析器に取り込む事はできません。
|
これに対し、速度出力による計測では、測定対象の方が出力が大きく、解析器のレンジを測定対象に合わせる事ができます。一端、速度で計測して、FFTアナライザーなどで積分を行って変位換算した方 が精度良く計測する事ができます。この例の様に、振動周波数が高く、変位が微小な対象は「速度」による計測が有効です。