加振器を駆動する波形は、定常波、周期波、不規則波が最も使われています。それぞれの波形の特長をケースに応じて使い分ける事が重要です。
正弦波(Sin wave)による定常的な加振を指しますが、実際はゆっくりと周波数を変化させて掃引する低速掃引正弦波加振か不連続掃引正弦波加振となるのが普通です。
(長所)
対象物に最も大きなエネルギーを与える事が出来る。(小さな加振器で済む)
加振力の振幅、位相、持続時間、周波数変化率などを正確に調節出来る。
波高率があらゆる波形のうちで最小の1.4 である。
S/N比が飛び抜けて大きい。
非線形を性格づける事が出来る。正弦波加振は非線形の影響が最も出る。
(短所)
非線形の影響がもっとも現れるので、その影響が出ると周波数応答関数がひずんだり不連続になったりする。
時間が掛かる。
FFT と最も相性の良い信号形態です。FFTアナライザーに信号発生器が装備出来る事もあり、最も使われます。スウェプトサイン(チャープ)、周期ランダム、疑似ランダムがその周期波に入ります。
(共通の長所)
周波数解析の時に漏れ誤差を全く生じません。これらの周期波に共通の長所は周波数スペクトルの振幅が一様に分布しており平坦である事と、波高率が小さく、応答が雑音に強い ことです。1回の取り込みデータ毎のパワースペクトル密度が完全に一いたします。パワースペクトル密度が一定なので、雑音除去の為の平均化が少なくて済みます。
(共通の短所)
構造物のガタの様な非線形によって発生する高調波ひずみや振幅依存性は、周期で同じ物が繰り返し現れるので平均化処理では取り除けません。非線形の大きい対象物を周期波で加振すると良い結果は得られません。
疑似ランダム( Pseudo Random Random)
この信号は一見完全なランダム波の様に見えますが、FFTアナライザーの計測周波数内の全標本化周波数点における等しい振幅の正弦波を重ね合わせた物で、完全な確定波であり、周期波で す。疑似のランダム波です。外乱の影響を平均化によって除く事ができます。
(長所)
加振信号の振幅と周波数帯域を自由かつ正確に与える事が出来る。
加振信号の振幅が一定であり、特定周波数に片寄らない。
全周波数を同時かつ均等に加振するので応答の波高率がスウェプトサインより小さい。
応答漏れ誤差と分解能誤差をも無くすことが出来る。
外乱の影響を平均化によって除く事が出来る。
(短所)
非線形の影響を受けやすい。ガタや非線形の影響が出やすく、しかも周期的に出るから平均化によって除去出来ない。よってモード特性の同定精度が悪くなる。
全周波数帯域を励起するので、周波数あたりの加振エネルギーは定常波より小さい。
加振信号の特長 |
信号の種類 | 純ランダム | 疑似ランダム | 同期ランダム | バーストランダム | スウェプトサイン | インパルス |
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信号対ノイズ比 | 良好 | 良好 | 良好 | やや良好 | 優秀 | 劣る |
加振力の制御 | 可 | 可 | 可 | 可 | 容易 | 困難 |
加振スペクトルの制御 | 不可 | 可 | 可 | 可 | 可 | 不可 |
測定に要する時間 | 普通 | 普通 | やや長い | やや長い | やや長い | 非常に短い |
リーケージエラー | 有り | 無し | 無し | 無し | 無し | 場合による |
アベレージングによる非線形成分の影響除去 | 可 | 不可 | 可 | 可 | 不可 | ある程度 |
アベレージングによる外乱影響の除去 | 可 | 可 | 可 | 可 | 可 | 可 |