9. 騒音計の表示値
騒音計は音圧レベル(Lp)と騒音レベル(LA)を測定表示します。また、積分形騒音計ではこの 2 値の他、等価騒音レベル(LAeq)、単発暴露騒音レベル(LAE)、時間率騒音レベル(Lx)を演算表示することができます。ここでは、それぞれの表示値がどのように求められるか説明します。
9-1 音圧レベル <Sound Pressure Level> (Lp) について
騒音の分野においては、音波の強弱(音圧)の物理的な尺度として用いられます。単位は dB(デシベル)で表わします。
音圧レベルの大きい音は強い音、小さい音は弱い音ということができます。音圧レベル 0 〜 130 dB の範囲が主として対象になります。なお、周波数補正特性は Z(FLAT)が使用されます。
音圧レベルの定義式は、次のように表わされます:
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式 9-1 |
ちなみに人間の最小可聴音圧は 20 μPa = 2 × 10-5 Pa であり、これが基準音圧 p0 となります。従って、最小可聴値は:
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式 9-2 |
9-2 騒音レベル <A-weighted Sound Pressure Level> (LA) について
音の物理的大きさの尺度である音圧レベルに A 特性の補正を行った量として表したもので、この A 特性音圧レベルを日本では騒音レベルと呼び、これを騒音の大きさの尺度として用いています。記号は通常 LA を用い、単位は dB(デシベル)です。旧計量法では“ホン”という単位を使用していましたが、dB と同じ量です(改訂により国際規格に合わせ dB となりました)。A 特性補正値としては 40 dB、1 kHz の音圧レベルを基準(0 dB)として、それと等しい大きさに感じられる等感曲線が用いられています(第 6 章 4 節「音の大きさのレベル(loudness level)」を参照)。
図 9-1 周波数重み特性と許容差 |
【補足】:サウンドレベルについて
JIS C 1509 サウンドレベルメータ(騒音計)では、ある周波数重み特性で求めた音圧レベルを、“サウンドレベル”と呼び、例えば周波数重みが A 特性の場合は、A 特性サウンドレベルとなります。また、本規格では、大きく以下の 3 つのサウンドレベルを規定しています。
相当する表示値 | |
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① 時間重み付きサウンドレベル | 音圧レベル、騒音レベル |
② 時間平均サウンドレベル | 等価騒音レベル |
③ ピークサウンドレベル | (騒音レベルの最大値ではない) |
①は騒音計の基本ブロック図(図 8-1)や処理の流れ図(図 8-12)にあるように、瞬時音圧の 2 乗値を時間重み付けしてレベル化したものです。JIS C 1509 から引用して、A 特性時間重み付きサウンドレベルを式で表現すると:
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式 9-3 |
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式 9-3 は、周波数重み付けした瞬時音圧の実効値をどのように求めるかを表現していて、A 特性時間重み付きサウンドレベルすなわち今までの騒音レベルに相当します。また上式は、観測時刻 t の関数となっており、時間によって変動する(可能性)があるレベルであることを表現しています。定常的な騒音であれば、この騒音レベル値がほぼ一定値となり、時間的に変動する騒音であれば、②の時間平均サウンドレベルを求める必要があります。
9-3 等価騒音レベル <equivalent continuous A-weigted sound pressure level> (LAeq,T)について
図 9-2 変動する騒音レベルと等価騒音レベル |
等価騒音レベルの定義式は:
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式 9-4 |
- 等価騒音レベルは、正式には LAeq, T と表記します。
- JIS C 1509-1 におけるサウンドレベルで表現すると、A 特性時間平均サウンドレベル(A weighted S time average sound level)となります。
9-4 単発騒音暴露レベル <sound exposure level> (LAE)について
単発的または間欠的に発生する継続時間の短い騒音を測定する量として規定されています。これは、図 9-3 に示すように、単発的に発生する騒音の全エネルギーと等しいエネルギーを持つ継続時間 1 秒の定常音の騒音レベルに換算した値となります。
電車の通過音やくい打ち音などの間欠的に発生する騒音では、この LAE を測定し、等価騒音レベルに換算するなど、騒音評価の基礎データとして使われます。
図 9-3 単発騒音暴露レベルの意味合い |
単発騒音暴露レベルの定義式は:
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式 9-5 |
単発騒音暴露レベルと等価騒音レベルとの関係は:
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式 9-6 |
JIS C 1509-1 では、A 特性音響暴露レベル(A weighted sound exposure level)といい、ある時間で積分した音のエネルギーのレベルに相当します。
9-5 時間率騒音レベル <Percentile Sound Pressure Level> (Lx) について
変動騒音の評価量として古くから使われ、わが国において騒音規制法における騒音の評価量として用いられている量で、不規則にかつ大幅に変動する騒音レベルの分布状況を評価するのに有効です。
下図 9-4
に示すような、ある実測時間内の変動騒音に着目した場合、その騒音レベルがあるレベルを越えている時間の合計が実測時間
T = t2 - t1 の
x % に相当するとき、その騒音レベルを x %
時間率騒音レベルといい、Lx
で表わします。
下図 9-5
は、一般的な変動騒音について、時間率騒音レベルを横軸に、パーセント時間率を縦軸に取って、上述の関係を示したものです。
JIS Z 8731:1999 では LAN, Tと表記するようになりました。
図 9-4 変動する騒音と時間率騒音レベル |
図 9-5 時間率騒音レベルとパーセント時間率との関係 |
実際に時間率騒音レベルを求める場合、下図 9-6 のように一定時間間隔 Δ t ごとに、騒音レベルをサンプリングし、その結果を統計的に処理して所定の時間率騒音レベルを求めます。統計処理の方法としては、サンプリング値から累積度数分布を求め、騒音レベルの累積百分率が(100 - x)% になる騒音レベルを x % 時間率騒音レベルとする方法が一般的です。
我が国では、50 % 時間率騒音レベル L50 を騒音レベルの中央値、5 % 時間率騒音レベル L5 と 95 % 時間率騒音レベル L95 をそれぞれ 90 % レンジ(95% - 5% = 90% レンジ幅))上端値と下端値、10 % 時間率騒音レベル L10 と 90 % 時間率騒音レベル L90 をそれぞれ 80 % レンジの上端値と下端値と呼び、変動騒音の評価量として広く用いられてきました。これら 5 つの値を合わせて慣例的に“5値”と呼んでいます。 なお、時間率騒音レベルの測定法としては、一般的に 5 秒(Δ t に相当)50 回法が使用されています。