9-6 最大騒音レベル(Lmax)と最小騒音レベル(Lmin)について

ある測定時間内における最大の騒音レベルを Lmax として、また最小の騒音レベルを Lmin として表します。

 

イラスト(変動する騒音レベルと最大値/最小値)

図 9-8 変動する騒音レベルと最大値/最小値

 

9-7 N 秒間の最大値(Tact max)について

LpLA などの瞬時値は、サンプリングデータの中の 1 秒毎の瞬時値を表示しています。これに対し、Tactmax は、1 秒間の高速サンプリングデータの中の最大値を表示します。日本では、騒音レベルとして瞬時値が用いられますが、欧州では、Tactmax 1 秒または 3 秒が一般的に用いられます。

 

(注意)

騒音計の旧 IEC 規格(IEC 60651)では、「瞬時音圧レベルの数字表示は 1 秒間毎の最大音圧レベル(すなわち Tactmax 1s)とする」との規定がありました。

 

イラスト(騒音レベルのサンプリングと Tactmax 値(1 s))

図 9-9 騒音レベルのサンプリングと Tactmax 値(1 s)

 

9-8 ピークレベル値(Lpeak

ピークレベル値は、ある時間内での瞬時音圧(AC 出力波形)の絶対値の最大値をレベル化して求めた値です。単発バースト信号の場合は、図 9-11 に示したように LPeak と騒音レベルの最大値(Lmax)との差がかなりあることが解ります。定常信号の正弦波の場合、LPeak は正弦波の振幅値(ピーク値)を示し、Lmax はその実効値を示すので、差が約 3 dB になります。

LPeak は、次の式で求めています。

式9-7

式 9-7

ただし、f0 は基準となる音圧(Pa)= 2 × 10-5 の時の AC 出力の値であり、fA (t) max は AC 出力(瞬時音圧)の波形の最大値です。

 

イラスト(騒音計ピークレベル値:入力信号に対するA特性後の波形の変化)

図 9-10 入力信号に対するA特性後の波形の変化
 f (t) :単発バースト信号の入力波形
 fA (t) :f (t) の A 特性フィルタを通った AC 出力波形

 

イラスト(騒音計の入力信号に対するピーク値「Lmax と Lpeak の違い」)

図 9-11 入力信号に対するピーク値「Lmax Lpeak の違い」
Lmax :DC out 波形の最大値
LpeakfA (t) の波形を(絶対値)対数演算した波形の最大値

 

(注意)

最大値とピーク値との違い

今までは、9.6 の最大騒音レベル(Lmax)を騒音レベルのピーク値と呼んでいました。 改めて、その違いを意識してまとめます。
(1)最大騒音レベル(Lmax
ある時間内での瞬時騒音レベル最大値で、図 1-1 の最下段のグラフ(レベルの時間トレンド)の最大値になります。周波数重みと時間重みに依存します。DC 出力値の最大値です。JIS C 1509-1 では、時間重み付きサウンドレベルの最大値と呼ばれます。
(2)ピークレベル(Lpeak
瞬時音圧(AC 信号)の最大値をレベル化したもので、図 1-1 の 2 段目のグラフ(瞬時音圧)の絶対値を取り、その最大ピーク値をレベル化したものです。周波数重みだけに依存して、時間重みは関係ありません。AC 出力の最大値のレベル化したものです。JIS C 1509-1 では、ピークサウンドレベルと呼ばれます。

もちろん、LpeakLmax となります。定常正弦波の信号であれば、約 3 dB の違いとなりますが、 通常の衝撃騒音であれば、10 dB 以上の差となります。ピークレベル(Lpeak)は、時間重み I(インパルス)にかわり、 騒音の衝撃性の評価に使われつつあります(JIS Z 8737-1 附属書 A <参考>をご参照ください)。

  • 上記の例では、周波数重み A 特性のフィルタ後の波形の変化を記してありますが、C 特性など他の周波数重みでも同様に考えることができます。
  • 欧州の CE マーキング規制のため、周波数重み“C”での C 特性ピークサウンドレベル LCpeak を求めることが多いです。
  • 機械騒音の測定方法である JIS Z 8737 シリーズ「作業位置および他の指定位置における機械騒音の放射音圧レベルの測定方法」には、用語としてピーク放射音圧レベル Lp, peak が規定されています。 さらに、基本測定量として、C 特性ピーク音圧レベル LpCpeak が規定されています。