概要
自動車業界や家電業界など様々な業界において、低騒音化技術による静音化が一段落しつつあり、現在では音質の改善が行われています。例えば、自動車では車格に見合うような音作りがなされていたり、掃除機では力強さ感を損なわないような音作りが行われています。
このような音作りを設計に反映していくには、主観的な評価だけでなく、物理解析により得られた結果との関係性を求めることが重要になります。
本例では、単発的な過渡音である乗用車の集中ドアロック音を評価した事例を紹介します。

< 聴感実験風景 >
(小野測器 テクニカルセンター 半無響室にて実施)
解析の流れ

1. 対象となる複数車種の集中ドアロック音を収録します。
2. SD法による聴感実験を行い、主観量の評価を行います。
音源の提示回数を複数回にし、提示順をランダムにすると被験者毎でのバラツキも確認できます。
3. オクターブ解析、非定常音ラウドネス、シャープネスや時間軸波形のエネルギー前後比などの物理解析を行い、周波数と時間変化の両面から特徴を把握します。
4. 2と3の結果から、SD法で用いた形容詞対毎に関連の深い物理量を見出し、物理量による特徴抽出を行います。
5. それぞれの形容詞対について求めた結果をまとめて主成分分析を行い、主観評価の全体的な傾向を掴みます。
力強い |
⇔ |
弱々しい |
やかましい |
⇔ |
静かな |
忙しい |
⇔ |
のんびりした |
かたい |
⇔ |
やわらかい |
鋭い |
⇔ |
鈍い |
はっきりした |
⇔ |
ぼんやりした |
統一な |
⇔ |
ばらばらな |
重厚な |
⇔ |
軽薄な |
高級な |
⇔ |
安っぽい |
上品な |
⇔ |
下品な |
<聴感実験に用いた形容詞対>
解析結果
聴感実験の結果から、「やかましい」 がほぼ同じ評価であるC車とG車では、「統一な」「重厚な」「高級な」「上品な」 で表現される美的因子に大きな違いがあることが分かるように、車種によって評価が異なっていることが捉えられています。
そして、物理解析の結果と主観評価の相関から、「力強い」「はっきりした」 といった迫力因子や「鋭い」「かたい」 といった金属因子はA特性音圧レベルや非定常音ラウドネスのピーク値(N0)と相関が高いことが分かります。また、上位 20 %とピークとのラウドネス比(N0/N20)をみると、「はっきりした」 と「統一な」 との相関が高いことが分かります。
このように、音質を評価することで、使用者の好みに合せた音作りの指針が得られ、製品としての付加価値も高められます。

応用例
- ドア閉め音 主観評価
- 掃除機の吸い込み音 主観評価
- ゴルフクラブの打音評価
小野測器では、本アプリケーションによる測定を、音響・振動に精通したコンサルティンググループで承っております。
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最終更新日:2012/07/17