この間、うなり音について、2つのわずかに周波数が違う音が重なるとうなりが生じること教えてくれたけど、その周波数の差がどんどん広がった場合はどうなるの?
周波数の差がうなりの周期だから、前に話した例では、205 Hz と200 Hz で、5 Hz の変動周波数だったよね。 これは、1秒間に5回音が大きくなったり小さくなりったりくり返す音だったけど、2つの音の周波数の差が大きくなると、周期が短くなるのはわかるね。
うん、それはわかるけど、うなりって1秒に数回ならわかるけど、周波数の差が数十 Hz になると、1秒間に数十回変動するわけだから、どんな感じになるんだろうと思って。
そうだね。 これは、おとも前に言ってたよね。 鳴き竜の話をしたときの変動する音のこと。 前に聴いた
"変動する周期を 1 Hz から 200 Hz まで変化させたときの音
"をもう一度聴いてみようか。
良く聴いてみると、 変動周波数が 30 Hz ぐらいから、少しずつ低い音になっているのがわかる。 例えば、変動周波数 4 Hz と 200 Hz を聞き比べてみると、音の高さ違って聴こえるよね。
確かに、あの時は音の粗さに注目していたから、気がつかなかったけど、こうやって2つを聴き比べると、音の高さが違うね。 これはどういうことなの?
少し難しいと思うけど説明するね。 1000 Hz の搬送波を 200 Hz で振幅変調させると、 図に示すような時間(図2)と周波数(図3) のグラフになるんだ。 これが、今聞いた変動周波数 200 Hz の音の周波数のグラフだけど、1000 Hz より、200 Hz 高い音(1200 Hz )と低い音(800 Hz )の成分があることがわかるね。
時間(図2)
周波数(図3)
でも、どうして今聴き較べた変動周波数 4 Hz と 200 Hz の音で 200 Hz の方が低く聴こえたんだろう? もとの 1000 Hz は同じなのに....。.
人の聴覚は、基本的に周期を捉えるようにできているんだ。 音の高さは周期にほかならない。 でも可聴周波数の下限に近づいて、その周期が長くなると、音の高さではなく あるリズムをもったパターンに聴こえるんだ。
"うなり" もそのパターンだね。 音の高さとしての 4 Hz の音は人には聴こえないから、元の波形の周波数 1000 Hz の音で、周期としての 4 Hz がパターンで聴こえるということでしょ。 でも、それは変動周波数 200 Hz の音が低く聴こえるのと関係はないよね?
なんとなく。 2つの周波数が近い音がある時に、どちらかの音が片方をマスキングするんだったよね。
そうだね。 低い方の音が、高い方の音をマスキングするんだったね。
そうか。 わかった。 このグラフでは、1200 Hz の音は 1000 Hz の音にマスキングされるけど、800 Hz の音はマスキングされないから、1000 Hz より低い音が聴こえたということ?
正解! それぞれの周波数の差が臨界帯域幅(人の聴覚が音の高さを分離できる帯域幅)内であれば、マスキングが起こるわけだけど、この場合は、ぎりぎりでその範囲の中と考えることができるから、マスキング効果が働いてると考えられるんだね。
おとうさんが、変動周波数が 30 Hz ぐらいから、少しずつ低い音になっていると言ったのは、1000 Hz より変動周波数分低いピークの音が聴こえていて、その音が 1000 Hz から徐々に低い方に差が大きくなるからなんだね。
その通り。 実は、おとが最初に質問した2つの音の差が広がった場合の2つの音の重ね合わせは、振幅変調をした波形とほぼ同じ形になるんだ。 この図(図4)が、1000 Hz と 1200 Hz の音の波形を重ねたもの。
(図4)
2つの音の重ね合わせには、もうひとつ面白い現象があるんだ。 この波形を観察すると、同じ形が繰り返している周期は、例えば 1000 Hz の波形と比べて何倍になっている?
5倍になっている! そうか、1000 Hz と 1200 Hz の差の 200 Hz が、この同じ形の波形の周期になっているんだね。
そのとおり。 そして、この差の 200 Hz の音が聴こえるんだ。 さっき、人の聴覚は、基本的に周期を捉えて、その周期が音の高さだって言ったでしょ。 うなりは、周波数の差が時間変化のパターンだけど、周波数の差が広がると、その差の周波数の音が聴こえるようになるんだ。
そうか。 注意深く聴くと、確かに低い音が聴こえているね。
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1000 Hz
1200 Hz
1000 Hz + 1200 Hz
200 Hz