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サウンドスケープ(音の風景)

サウンドスケープ(音の風景)

おとくん 「 今日総合の授業で、クラスみんなで屋上に上がってイヤークリーニングをやったんだ。 」

お父さん
 「 ああ、それはいい体験だったね。静かに目を閉じて聞こえてくる音を書き留めていく作業だろう。なぜそういうことをするか先生は説明してくれたかい? 」


おとくん 「 うん、『身の周りにある音に、関心を持つことで、快適な音の環境に対する意識を高めるため』って言ってた。」

お父さん
 「 音に対する感性を試すのは、何も音楽会とか、特別な場所に行かなくても身近なところにあるんだよね。
何か新しい発見はあったかい? 」


おとくん 「 普段は屋上にあがることってないんだけど、結構遠くの音が聞こえてくるんだ。特にまわりの道路に車が走ってないときは、 裏山の鳥のさえずりが聞こえたりとか、風で起こる音も、いろいろあって、手すりが鳴ったり、葉っぱが擦れ合って音がしたり、いつもは気がつかない音ばかりだった。 」

お父さん 「 音に神経を集中するといろんな音が聞こえるくるから不思議だね。屋上という場所は、遠い距離まで広く見渡せるから、校庭や学校のほかの場所では建物の影になって聞こえてこない音も聞こえるんだね。その中で不快な音はなかった? 」


イヤークリーニングおとくん 「 うーん、特に不快とは思わなかったけど、時々トラックが通ってうるさかった。でも、自動車の音もいろいろあるんだなって発見した。学校前の道路の信号が青のときに通り過ぎる車の音は、シャーという高い音だし、信号で止まってた車が走り出すときは、結構低い音が聞こえてきて、自動車の種類によってもそれが違うのがわかったよ。」


お父さん 「 なるほど。面白い点に気がついたね。自動車のアクセルを踏み込まないで同じ速度で走っているときは、車外への騒音は、タイヤと道路の接触音がメインで、600 Hz から 1000 Hz の成分が大きいんだよ。おとが言うように、停止から加速していくときは、エンジンの音が大きく聞こえるんだ。その音の高さ(周波数)は、エンジンの回転速度(1分間に回転する回数)に依存するんだよ。 」


おとくん 「 うん、加速する音もスピードとともに音色が変わってくるのがわかったよ。


お父さん 「 このイヤークリーニングのほかに、音の教育の一環でよく行われるのが、サウンドウォークっていうのがあるんだけど、それはやらなかった? 」


おとくん 「 うん、今日はイヤークリーニングだけだった。サウンドウォークって? 」


お父さん 「 地域の一定のエリアを音に集中して歩くことで、その場に固有にある音を発見する試みなんだ。音は大きさや高さのような物理的な量だけでなくて、気持ちのいい音だとか、聞きたくない音だとか、人が感覚的に捉えるものだろう。自動車のように移動する音源もあるけど、地域を歩くと、その場でしか聞くことができない特徴のある音を発見することがある。そういった地域を象徴する音や、人々が愛着を憶える音、逆に不快に感じる音も分け隔てなく記録していく・・・。 」


おとくん 「 騒音計をもって音を測りながら歩いても面白いだろうね。 」


お父さん 「 そうだね。でもサウンドウォークは、人々の耳を頼りに、感覚を研ぎ澄ますことが大事なんだ。」


おとくん 「 そうか、イヤークリーニングと同じだね。何でも数値にしないとわかならいと思ってしまうんだよね。」


お父さん 「 これまで、自動車や飛行機の騒音も、環境の中での自然な音も、何dBといった物理量で評価してきた。おとが言うように、数値にしないと誰もが同じように評価できないからね。でも、音は空気の振動という物理的な面と、快適な音や不快な音など感覚的な面がある。他の言葉でいうと、音は人それぞれがその音に感じる意味を呈示しているとも考えられる。例えば、虫の音に秋を感じたり、水のせせらぎに清涼感を感じたり。計測して物理的な量を把握することはもちろん大切なことなんだけど、その前に、その音が、人々にどんな意味を与えているかを考えることが、今、見直されてきているんだ。
カナダの作曲家であり研究者でもあるR・マリー・シェーファーという人が、サウンドスケープという概念を提唱したんだけど、今言ったように、音の意味的な価値を捉えなおして、音環境を一つの文化として考える姿勢を示したんだよ。 」


おとくん 「 サウンドスケープ? 」


お父さん 「 うん、ランドスケープとかシティスケープという言い方で、風景とか都市景観という意味で使われることばを音にあてはめて「音の風景」という意味の造語なんだ。 」 


おとくん 「 なるほど風景か・・・。サウンドウォークで見つけた音をその地域の地図に記録していけば、音の風景地図ができるね。 」

お父さん 「 そうなんだ。サウンドスケープでは、サウンドイベント地図と呼んでいるけど、まさに、その音の地図をつくることで、その地域にどこにどんな音があるのかがわかるようになるね。地域の人々にも音環境に意識を持ってもらう大事な試みだと思うよ。サウンドイベント地図は意味的な情報を示すものだけど、実は、物理的な音のマップも、特にヨーロッパで盛んに作成されているんだ。EUでは環境騒音による健康被害の危険性の認識をきっかけにして、2002年に環境騒音指令という騒音への取り組みの基本的な共通指針が出され、その中の一つとして人口25万人以上の地域を対象にノイズマップが作成されているんだよ。 」


おとくん 「 ノイズマップって、音を計測して、その数値を示したものなの? 」


お父さん 「 基本的には、計算なんだ。地形や建物の情報、音源の大きさや道路騒音などは交通量の情報など、様々な条件を入力して、音源から受音点までの伝搬による音の減衰を計算し、人々が住んでいる住戸での昼間と夜の
時間的に平均した騒音レベルをマップ上に表現 するんだよ。色の違いでレベルの大きさを表現するのが一般的なんだ。 」


おとくん 「 そうか、騒音の量としては、こんなふうにマップに表現できるんだね。音の意味も合わせて表現できれば面白いだろうね。 」


お父さん 「 そうだね。都市では道路周辺の音が大きいいから、地域固有の音があったとしても、交通騒音にかき消されることが多いだろうね。その意味でも、固有の音が再発見されるようなことがあれば、物理と意味の両方を表現したマップの意義が生まれるだろうね。 」



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