駅の音サイン

駅の音サイン

お父さん

おとは、駅の改札や階段付近で "ピンポン" とか鳥のさえずり音がしているのに気づいたことがあるかい?

おとくん

うん。 何のためなのか意味はよくわからないけど、"ピンポン" って音がしているのは知っているよ。

お父さん

あの音は、視覚障害者の人たちが、改札の場所や階段の場所がわかるように出している音のサインなんだ。

おとくん

サイン?

お父さん

ああ。 音声のようにダイレクトに言葉で意味を伝える以外に、"この音は、こういう意味を表すんだよ" ということがわかっていれば、その音を使って意味を伝達することができるだろう? 駅のピンポンは、"ここが改札ですよ。"  鳥の擬似音は、"ここがプラットホームの階段ですよ。" というサインなんだ。

おとくん

そうだったんだ。 他に音サインってどんなものがあるの? 電車の発車の直前に鳴るチャイムもそう?

お父さん

そうだね。 場所を示しているわけではなくて、時間のタイミングを知らせる音だから、晴眼者の人にもサイン音になっているね。 "乗車促進音" って言われるようだけど、基本的には、チャイムが鳴り終わるまでに乗車が終わるような意図があると思うんだ。

おとくん

でも、よく駆け込み乗車の人がいて、チャイムが鳴り終わってから、"ドアを閉めます。 駆け込み乗車をお止めください。" って車掌さんのアナウンスが入るよね。

お父さん

そうだね。 逆に、チャイムが駆け込み乗車を促進しているかもしれないと考えて、鉄道会社では、時間を短くしたり、チャイムをなくしたり、いろんな条件で実験をしているみたいだね。 まだ、結論はでていないようだけど、音に促進されて行動する人の心理は、奥が深くて、これで決まりという方法はないんだろうね。

おとくん

 へえー、面白いね。 駅には、サイン音だけじゃなくて、録音された音を繰り返し再生している音もあるよね。

お父さん

上り下りのエスカレータや駅のトイレの男性・女性の別を伝えている音もあるね。

おとくん

これは直接場所を示すわけだから視覚障害者の人たちに対しての音なんだね。

お父さん

そうだね。 おとが言ったように、この再生音は駅によっては間断なく流されているところがあるね。 エスカレータの案内音は、駅によっては、複数のホームの案内が重なって、聞き取りにくいところもあるように思うな。

おとくん

それに響きが長くて、言葉が聞き取れないこともあるよね。

お父さん

駅の構内や建屋の室内の内装に使われている材料は、半屋外になる部分もあるから、吸音材を使いにくいという面もあると思うけど、概して残響が長いところが多いんだ。 最近の公共の空間は、音響設計をしっかりやっていることろが多いけど、昔の建物は、そこまで考慮されていなかった面もあると思うんだ。

おとくん

それに、昔は "音サイン" なんて無かったんでしょ?

お父さん

そうだね。 "音サイン" が普及することによって、いろんな課題も見つかってきたところじゃないかな。 "音サイン" を騒音と感じて、とても気になる人だっているからね。 実はお父さんは、どちらかというと、とても気になってるんだ。 建築的にも、"音サイン"の提供の仕方も、もっと改善できるんじゃないかということも含めてね。

おとくん

僕は、あまり気にならないな。 チャイムも鉄道会社や駅でもご当地チャイムなんかあって、鉄道ファンの友達は、音をコレクションしている子もいるよ。

お父さん

そうなんだ。 結局この類の音は、音の大きさとかではなくて、個人的な好き嫌いで騒音と感じるかどうかが決まるんだろうね。 日本は、拡声器からの音が欧米に比べるとやや氾濫気味で、都市のサウンドスケープを考えると、疑問を呈している研究者もいる。 ただ、騒音と、安全性や利便性とのバランスを取らなければならないのは、前に話したハイブリッド車や電気自動車の近接報知音と同じなんだ。

おとくん

音の問題は、他の要求とのバランスをとらなければいけないことばかりだね。

お父さん

そうだね。 音は、とても身近にあって、当たり前と思ってしまうこととか、普段気がつかないことが多いんだけど、生活の中で、様々な役割があるんだ。 なるべく多くの人が騒音と感じないで、利便性や安全性を確保できるような音のデザインを、音を提供する場と一緒に考える必要があるんだね。

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