音の設計

音の設計

おとくん

お父さん、ホールの音の設計って、この間教えてくれた残響時間を決めることなの?

お父さん

残響時間は、もっとも大事な要素だけど、それだけじゃないんだよ。

おとくん

他にはどんなことを決めなきゃいけないの?

お父さん

そうだね、まず音の設計ってどんなことからか考えてみようか。音の設計といっても、自動車の扉を閉める音とか、携帯電話の折りたたむ音など工業製品の音の設計もあるし、会話や音楽など人間が音を聴く空間の設計、あとは、前に回折のことを教えてあげたとき、防音壁の話をしただろう、防音壁の構造や高さを決めたり、騒音がうるさいところを、遮音や吸音によって騒音を小さくするのも、広い意味では音の設計なんだよ。静かな住環境を保つためにマンションの床や壁の厚さなどを決めるのも音の設計だね。

おとくん

街の中でときどきスピーカから水の音とか流れてくるけど、あれも音の設計がされているんだよね?

お父さん

そうだね。あれはサウンドスケープといって、音の風景って訳されるけど、視覚に風景があるように、音にも風景があるということで、その場に合った音のイメージを連想できるように設計されているんだよ。でも、街の中に自然の音が流れてもピンとこないことが多いけどね。

おとくん

音って、身の回りにあるからあまり意識しないけど、正しい設計がなされていないと音が大きすぎたり、響きすぎたりで、本当に聞きたい音がちゃんと聞けなかったりするんだね。

お父さん

そうだね。じゃ、室内の音の設計のことを教えてあげよう。室内の音の設計は、まずその中に存在する騒音を小さくすることが大事で、その次に響きを室の目的にあったかたちで設計するんだ。体育館や室内競技場のような大空間から、会議室のような普通の部屋のレベルまで、室内といっても、大きさや目的が違うからね。残響時間は、簡単にいうと、空間の大きさと、壁や天井に使う材料の吸音率で決まるんだ。

おとくん

吸音率って?

お父さん

そうだね。一般的には、コンクリートみなたいな表面が硬い材料は、音がコンクリートに当たっても、そのほとんどは吸音しないで反射しちゃうんだ。その場合、吸音率は小さくて、1〜2 % ぐらい。逆に、厚手のカーテンや絨毯のような材料は、音をある程度は吸うんだよ。特に高い周波数では、吸音率は 30〜40 %ぐらいかな。

おとくん

100 % 音を吸う材料はないの?

お父さん

100 % に近い材料はあるよ。おとは聞いたことがないかな。ある周波数より高い音は、ほぼ完全に音を吸音する空間で、無響室っていうんだ。普通グラスウールっていうガラス繊維の吸音材を楔上に成型した壁や天井からできているんだよ。

おとくん

音を完全に吸ってしまう空間で、どんな感じだろう?でも、なんのためにそんな部屋が必要なの?

お父さん

それはね、騒音を出す機器を反射がある部屋で測定すると、機器から出す音にプラスして、壁や床で反射する音があるから、測った音は機器だけからの音より大きく測れてしまうんだ。だから、機器の騒音を正確に測定するには反射のない部屋、即ち無響室が必要なんだ。

おとくん

残響時間は空間の大きさで決まるって言ったけど、大きな部屋ほど、残響時間は長いの?

お父さん

そうだね。残響時間は、空間の大きさに比例して、等価吸音面積に反比例するんだ。

おとくん

等価吸音??

お父さん

等価吸音面積は、吸音率(材料が音を吸う能力、0 %:完全反射、100 %:完全吸音)に材料の面積を掛け合わせた数値のこと。空間の場合は、室を構成する壁、天井、床のすべての内装材料について、各材料の吸音率とその面積を掛けた数値の合計が、その室の等価吸音面積ということになるんだ。

おとくん

じゃ、容積が大きくて、吸音率の低い材料の多い空間は、残響時間が長くて、逆に小さい部屋で、吸音率の高い材料が多い空間は残響時間が短いということだね。

お父さん

その通り。たとえば、体育館とリビングルームを比べるとわかるだろう。小さな空間でも、お風呂で鼻歌歌うとエコーがかかったみたいで気持ちがいいのは、空間は小さいけど、内装がタイル貼りとかで、等価吸音面積が小さいからなんだ。

おとくん

そうか。じゃあホールも音楽を演奏するのであれば、残響時間を長くすればいいんだね。ということは、吸音率の・・・低い材料を使えばいいのか。

お父さん

そう簡単にはいかないんだよ。残響時間は長すぎると、細かい音が聴きづらくなるし、音楽でも、歌詞がわかる必要がある演目などは、残響時間が長いと、言葉を聴き取りにくくなるんだ。だから残響設計は、そのホールの目的に応じて、慎重に進める必要があるんだよ。

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