集合住宅の音 その2 空気音と固体音

集合住宅の音 その2 空気音と固体音

おとくん

お父さんに教えてもらった「床衝撃音」の話、こうぞくんに話してあげたんだ。そうしたら、こうぞうくんのマンションの管理組合のミーティングで 、やっぱり、この床衝撃音が中心議題だったそうだよ。でも結論は出なかったんだって。次回に持ち越し。で、こうぞうくんにはコミュニティの話もしてあげたんだけど、ミーティングでは床衝撃音以外にも 、洗濯機や掃除機の音も話題になったんだって。

お父さん

マンションの中では、他の住戸で出している音が、意外と外に聞こえてくることがあるんだよ。洗濯機や掃除機の音 、トイレの排水音、換気扇のファンの音とかね。音には、大まかに言うと、2種類あって、その一つは、話し声やテレビの音、ステレオの音のように、空気の中を伝わってくる音で、これを「空気(伝搬)音」というんだ。また、もう一つは 、コンクリートや水道などの配管などを伝わる音(振動)で、こっちは「固体(伝搬)音」というんだよ。コンクリートを伝わる音ってイメージしにくいけど、例えば 、学校とかで、近くで建設工事をしているとき、"ギリギリ"とか"ガァー"とか大きな音が聞こえてきた経験はないかい?これは 、機械でコンクリートを打ったり、孔を開けるときの振動(細かい揺れ)が、コンクリートや、地盤を経由して、教室まで伝わってきて、壁や天井から"音"として聞こえるんだよ。

固体(伝搬)音というのは、難しい言葉だけど 、元々の音が振動として伝わってきて、最後に教室の天井や壁が振動させてその結果として出てくる音なんだ。こうした音を「放射音」というんだよ。その「放射音」が 、今度は、空気の中を「空気音」として伝わって、最終的に、教室のみんなの耳に届いているんだよ。

おとくん

それじゃ、この間話してくれた"床衝撃音"も、今の話しと同じだよね。

お父さん

そのとおり。ドスンと上の階で飛び跳ねた"振動"が、フローリング(木質の床仕上げ材)やコンクリート(床スラブ)床の中を「固体音」として伝わり 、天井から放射されて、聞こえてるということなんだ。

おとくん

じゃ、洗濯機や掃除機の音も同じ?

お父さん

そうだね。洗濯機も足が床についているから、脱水のときなど、洗濯機が大きく振動すると 、床に振動が加えられ(加振)、それが床の中を「固体音」として伝わるという意味では、同じといえるね。ただ、洗濯機も掃除機も、振動を発生させているだけでなく 、使われている部屋の中へも音を出しているよね。これは「空気音」として伝わる。でも「空気音」は、壁や床で遮られると、その音は、かなり小さくなるので、隣の住戸まで 、「空気音」として伝わることはほとんどないと思うよ。テレビの音も、よほど大きな音を出さない限り、隣の住戸からは聞こえてこないんだよ。

おとくん

そうそう、昨日のミーティングでは、トイレの排水音も問題になったようだよ。

お父さん

これもやはり「固体音」の問題だね。トイレの排水音は、配管(雑排水竪管)が上下階の床を貫いて通っているので 、上階の住戸からの排水音が流れるときに、下階で、"ジャー"と聞こえることがあるんだ。配管の中の流水音が配管へ「固体音」として伝わり 、それが配管を支持しているサポートや、配管を埋め込んでいるコンクリートに伝わって、同じように壁などから放射されるんだよ。

おとくん

なるほど、マンションの中の「固体音」っていろいろんな種類があるし、テレビとか、話し声などの「空気音」に比べると 、問題になる場合が多いんだね。

お父さん

そうだね。マンションは一つの大きなビルで、床や壁、配管などは他の住戸と繋がっているわけだから 、特に固体音は問題になりやすいね。

おとくん

固体音を聞こえないようにする方法はないの?

お父さん

床衝撃音は、椅子の足にフェルトなどの軟らかい材料を貼ったり、部分的にカーペットを敷くことなどで対応ができることは 、この間話したよね。重量床衝撃音は、飛び跳ねなどしないようにするしかないけどね。
また、洗濯機とか掃除機は、まず、深夜とか早朝の時間を避けることが第一だね。

おとくん

それは、その時間が静かだから?

お父さん

そうだね。騒音と静かさの関係の話しをすると長くなるから、また今度詳しく話してあげるけど 、昼間や夕方は、外の車の音や、テレビの音などで、結構いろんな音があって、部屋の中の騒音レベルは以外と大きいんだ。

おとくん

騒音レベル?

お父さん

簡単にいうと、人間が聞く音の大きさをレベルであらわしたものだね。騒音レベルが大きいところに 、他からの音が入ってきても、聞こえないことがあるんだよ。ちゃんと音を聞こうとすると、「シーッ、静かにして!」って言うだろ。それと同じだよ。

おとくん

なるほど、夜中や朝早い時間は、車の量も少ないし、テレビもつけてないから、騒音レベルが小さくて 、他から入ってくる音が良く聞こえるというわけだね。

お父さん

あとは、そうだね。洗濯機については、足の下に防振ゴムといって、振動が伝わらないように対策することもできるね。でも 、どんな防振ゴムでも効果があるわけではなく、洗濯機の重量に応じて、適切な防振ゴムを選択することが必要なんだ。配管の振動も防振で対策可能なんだよ。これは 、設計の問題で、建物ができてしまった後では、改修工事に大変な費用がかかってしまうけどね。

おとくん

なるほど、よくわかったよ。でも、どこから音がきているかわからないことってないの?

お父さん

固体音は、今話した以外にも、騒音の問題になった例として、エレベータ、オートドアの開閉 、台所の換気扇、機械室の設備機器、ポンプ室、トイレの使用音、駐車場、鉄骨階段の歩行など、たくさんの原因があるんだよ。だから、騒音が問題になっている部屋からは 、どこから音が伝わってきているのか、また何が原因で音がしているのか、振動や騒音の測定をしないとわからないケースも多いんだよ。
まず、マンションに住むということは、多少なりとも、そのような騒音が存在するということを前提にしないといけないんじゃないかな。そして、マンションは 、たくさんの家族が、コンクリートの床や壁、配管を共有して住んでいるわけだから、時間帯とかも気をつけて、お互いに騒音を出さない工夫をしなければいけないということだね。

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