FFT解析に関する 基礎用語集

 

サンプリング定理

サンプリング間隔をΔt秒(Δt秒に一回サンプリング)とすると、サンプリング周波数は1/Δt(1秒間に1/Δt点サンプリング)ということになります。サンプリング定理は、時間的に連続な信号とそれをサンプリングする速さの関係について情報が保たれる限界を示すもので、「信号に含まれる最高周波数成分の2倍以上の周波数でサンプルしなければならない」と定められています。サンプリング周波数が信号の周波数の2倍より低くなると、エイリアシング(折返しひずみ)が生じます。

 

時間軸微積分

・微分

1階、2階微分値の演算は、5次ラグランジェの内挿公式を利用し、その点の前後を含んだ5点の値から1点のデータを求めています

   はサンプルデータとする。

 

・1階微分

 

 

・2階微分

 

 

・積分

1重、2重の積分値の演算は台形公式を使用し求めています。 

 

・1重積分値の演算式

 

 

・2重積分値の演算式

 

 

時間軸波形

パネルの入力コネクタから入力された信号の瞬時波形を表示します。1フレーム分が表示されます。このとき、X軸はフレームの始点を0とする時間(秒)、Y軸は瞬時値で表示されます。X軸のフルスケールは設定された周波数レンジに連動して設定されます。

 

時間波形統計計算

(1)平均値(MEAN)

(2)実効値(RMS)

(3)標準偏差(S.D.)

平均値のまわりの2次モーメントは分散といわれ、分散の平方根を標準偏差といいます。直流成分を除く信号の実効値と標準偏差は同一です。以下の式により求めています。

(1)、(2)、(3)の関係式は次のようになります。

(4)スキューネス(SKEWNESS)

平均値のまわりの3次モーメントをσ3で正規化したもので、平均値のまわりの非対称性を示す指標として用いられています。以下の式により求めています。

(5)クルトシス(KURTOSIS)

平均値のまわりの4次モーメントをσ4で正規化したもので、波形の尖鋭度を表す指標です。以下の式により求めています。正規分布(ガウス分布)の時間信号でのクルトシスの値は3となるので、以下の式から3を引いた値をクルトシスとすることもあります。

(6)クレストファクタ(CREST FACTOR)

    ピーク値(最大値) / 実効値

 

 

実効値

信号の2乗平均値の平方根です。英語では root mean square (rms)です。

計算式は

    

サイン波では、実効値はピーク値の1/√2になります。パワースペクトルの各ラインのデータはその帯域の信号の実効値 の2乗、すなわち2乗平均値になります。


 

実効値とは

例として、電熱器を考えてみます。電熱器に直流電圧をかけると熱が発生します。電熱器のニクロム線(最近はセラミックヒーターかも知れませんが)は抵抗ですから回路としては、下図1のように表されます。

図1

電圧が100 V、抵抗値が100Ωの場合に発生するエネルギー(熱)を考えてみると、抵抗に流れる電流はオームの法則;

から、I = E/R = 100 / 100 = 1 (A)となり、また、電力 W は、W = E × I = 100 × 1 = 100 (W) になります。いちいち電流を計算するのは面倒なので、一般的には、I = E/R より;

が良く用いられます。100 Ω の電熱器に 100 V をかけると 100 W 分の熱が発生することが分かりました。ところで、家庭用の電源は、実効値 100 V ですが、直流ではなく、関東では 50 Hz の交流(正弦波)です。この家庭用電源に 100 Ω の電熱器を接続すると何 W 分の熱が発生するのでしょうか?
答えは、100 W です。つまり、”実効値とは同じ仕事をする直流電圧に置き換えたもの”なのです。では、同じ電熱器を AC 200 V で使用したらば何 W を発生させるでしょう?<実際にはこんなことをしたら電熱器が壊れてしまうでしょうが>
AC 200 V は、DC 200 V と同じパワーを持っているので、DC 200 V として考えると、2002/100 = 400 W となり、200 W にはなりません。これは、”電圧が 2 倍になると電流も 2 倍になり、電力は 22 の 4 倍になる”ためです。では、次の図 2 の実効値はどうなるでしょう?

図2

単純に絶対値を平均すれば 1.5 V ですが、実際に発生する電力を考えてみましょう。抵抗値が 100 Ω では計算が面倒なので 1 Ω で考えます。1 V の時と 2 V の時に発生する電力は以下の式になりますが、抵抗 1 Ω を省略しても結果は変わりません。

電圧の 2 乗したものは、1 Ω の抵抗に発生するパワー(電力)になります。電圧、電流を 2 乗したものを見たらパワーだなと思ってください。(1 Ω の場合、電圧と電流は等しくなるので、式 2 から電流の 2 乗もパワーになります)

平均電力は、1 W の区間が 1/2 と 4 W の区間が 1/2 ですから 2.5 W になります。つまり、この波形は、1 Ω の抵抗に 2.5 W の電力を発生させる DC 電圧と同じパワーを持っていることになります。

となり、実効値は 1.58 V であることがわかります。

実効値はパワーの平均をルートしたもの。言い換えると、実効値はルートした 2 乗の平均のことで、これを英語では 「root mean square」といい、特に実効値であることを強調したい場合には、単語の頭文字をとって「rms」と表記します。

正弦波の実効値はピーク値の 1/√2 = 0.707、ですから家庭用の 100 V 電源の波形は、下図 3 のようにピーク値が実効値の √2 倍の 141 V になっています。(ちなみに、平均値は 2/π = 0.637 です)

図3

再び、この電源に 100 Ω の電熱器を繋げてみましょう。そうすると、最大電力は;

から、200 W になります。最小電力は 0 W であることは明らかですので、発生する電力は 0 W と 200 W の間を往ったり来たりすることは容易に想像できます。この様子を図示したのが、下図 4 です。この時の平均値は、100 W であることは明らかでしょう。

図4