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「モノ→コト→モノの循環」による創出

Product–Experience Cycle

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ユーザー目線の「ものづくり」

挑戦を続ける当社は、2023年に「ベンチマーキングレポート」の販売を開始。そこで得た知見をもとに新たな製品につながるチャレンジを敢行しています。「クランプ型トルク計」や「既存製品の新しい活用法」はその嚆矢こうしとなるものです

お客様目線に立ち返る新製品開発

当社が2023年から開始した新規事業「ベンチマーキングレポート」販売。車両計測データの販売事業は当社初の試みであり、これまでの「モノ売り」から「コト売り」ビジネスへの挑戦を掲げた取り組みです。

本事業の目的はそれだけではありません。自分達で販売している計測機器を実際に使ってみて、「もっとこんなところを計測してみたい」という発見、気づきを得て、それを新たな製品開発につなげていくサイクルを回そうとしています。

言わば「マーケットイン」と「プロダクトアウト」を同時に行うような試み、それが当社のチャレンジというわけです。

今回はそんな当社の挑戦から生まれた「クランプ型トルク計」と、既存製品の新しい活用方法を見出した「コリオリ式連続質量流量計」をご紹介したいと思います。モノ→コト→モノの循環による新たな価値の創出を目指し、日々邁進しています。

お客様目線に立ち返る新製品開発イメージ

【クランプ型トルク計】

クランプ型トルク計イメージ

お客様が所有するドライブシャフトをお預かりし、取付状態の特性を精緻に評価することで、シャフトそのものをセンサーの一部として利用。シャフト側に加工は必要ない。

ドライブシャフトにクランプ型トルク計を装着した状態イメージ

ドライブシャフトにクランプ型トルク計を装着した状態

エコカーの燃費性能向上に貢献する

今回お話を伺う「クランプ型トルク計」ですが、これはどういう製品なのでしょうか?
山田

本製品は、現在市場に流通する自動車に使われているドライブシャフトにかかるトルクを計測するためのものです。計測した数値をワイヤレスで転送します

どんな経緯で開発がスタートしたのですか?
山田

当社のMBD等に関連して、『(クランプ型トルク計のような製品が)あるといいね』というのは以前から分かっていました。そのうえで、私が所属するチームで取り組むテーマについて考えた時に『光学式センサーを使って何かできないか』と、企画がスタートしました。それから紆余曲折あり、歪みゲージを使った現在の計測方式に落ち着きました

コネクトラボ リーダー 山田 計

コネクトラボ
リーダー

山田 計

当社の受託試験やベンチマーキングレポートを担当しているチームからの要望は?
山田
本製品の開発がスタートした頃でしょうか、ちょうどその頃ベンチマーキングレポート販売の企画が立ち上がり、担当者の意見も拾いながら進めてきました。彼らは自動車メーカーの声を日々ダイレクトに聞きながら仕事しているので、本当はお客様が何を求めているのか、何ができたら嬉しいか、というのはよく分かっています
実際、本製品はどのような用途で使うのでしょうか?
山田
例えばハイブリッドカーの場合、エネルギー回収を行う回生ブレーキの性能が重要になってきます。ですが、現在主流を占める摩擦ブレーキを併用する制動機構においては、減速時に回生ブレーキが発動しているのか、摩擦ブレーキが発動しているのか、または両方発動しているのかが外からでは分かりませんでした。本製品でドライブシャフトのねじれ量を計測すれば、例えばハイブリッドカーが減速時に『今、摩擦ブレーキを4割、回生ブレーキを6割利かせている』といったことが分かります
本製品で電動車両のドライブシャフトを計測することで、燃費の向上に貢献するのですね。素晴らしいです。こちらはいつ頃製品化予定でしょうか?
山田
もちろん、これだけで車両トータルの回生性能を推し量ることはできませんが、重要な指標の一つがわかる、ということです。製品化については、現時点では特注で対応しており既にお客様に販売を開始しています。今後引き合いの声が多ければ、標準製品として量産も検討していきたいと思っています

【コリオリ式連続質量流量計FZ】

お客様目線に立ち返る新製品開発イメージ

今回の計測は「冷媒が液体の状態で流量を測ること」を目的としてコリオリ式連続質量流量計FZシリーズを使用。液体で計測したいが、流量が増えると圧が下がり気体になってしまう可能性がある。そこで気体か液体か、という判断にFZの密度のデータを使用。(写真上がFZシリーズ本体)

お客様目線に立ち返る新製品開発イメージ

気液状態の冷媒をいかに計測するか

ベンチマーキングレポート第一弾の「BYD 元PLUS」は中国製電気自動車(EV)として競合メーカー注目の一台です。群雄割拠するEVはバッテリーの冷却が肝で、同車は「冷媒」を使用した方法を採用しています。冷媒というのはエアコンガスのことですよね。
木野内
はい、BYDの大きな特徴としてバッテリーの冷却と車室内冷却を冷媒で行っているということが分かりました。ベンチマーキングレポートの「熱マネジメント」をまとめるにあたり、その冷媒が行った熱交換量を計測したい、ということがそもそもの発端でしたね。私は計測を担当しました
三瓶
私は、後述するコリオリ式連続質量計FZシリーズの企画を担当しています。木野内さんから相談を受け、まず熱交換量を計測するにはどうしたらよいのか、というところから調べたところ、単位質量あたりの熱量であれば、温度と圧力が分かれば冷媒の特性線図を描くことで求めることができる、と分かりました。しかし、温度と圧力は頑張れば計測はできますが、肝心な質量流量が分からないと、特性線図から求めた比エンタルピーだけでは駄目でした
  • 営業本部 マーケティングブロック 特注商品グループ 係長 三瓶 祐一郎

    営業本部
    マーケティングブロック
    特注商品グループ
    係長

    三瓶 祐一郎

  • アイデア実現ラボ リーダー 木野内 喬

    アイデア実現ラボ
    リーダー

    木野内 喬

  • アイデア実現ラボ リーダー 田中 鉄也

    アイデア実現ラボ
    リーダー

    田中 鉄也

比エンタルピーとは何でしょう?
木野内
単位質量あたりのエネルギー量ですね
冷媒は計測しやすい物体なのでしょうか?
三瓶
いえ、冷媒は測りにくいです。流量として計測する場合、気体と液体が混ざってしまうと正確な計測ができないので状態が変わらない場所で計測するしかありません。一番計測しやすいのは液体の時です。今回、流量と密度の両方を計測することができるコリオリ式連続質量流量計FZなら測ることができると思いました
そこで木野内さんは、BYDのシステムの中でどこが一番液体なのかを調べたということですね。
木野内
そうなります。『冷媒が車室外凝縮器を通過し凝縮された後が液体だろう』ということでそこに設置しました
田中
今回私は計測機器の装着を担当しました。車体の上側に置き場所がないので下側に配置しました
三瓶
重力加速度の影響で精度に影響が出るので、水平に設置する必要があります
実際に計測した結果はいかがでしたか?
木野内
条件によって気体と液体が混ざった状態もありましたが、液体が流れている時はきちんと計測できている、という結論に至りました
今回は「仕様外の使い方」と伺いましたが、具体的にはどういうことでしょうか?
三瓶
今回の流量計測は、液体状態で計測していることが必要でした。液体状態か、気液混合状態かを判断するために、密度データを利用しました。冷媒の密度は、1.3g/cm3くらいです。仕様範囲外とは“密度の校正範囲が1g/cm3までなので計測データを保証することができない”ということです。FZの設計値上の最大密度値は5.0g/cm3までです
今回のケースは「単に当社の計測機器を使えば計測できる」ではなく、前段階の準備が大変だったのですね。
三瓶
そこは木野内さん、田中さんの腕の見せ所でしたね