オクターブ

オクターブ

おとくん

おとうさん、この前パスカルとデシベルの話をしてくれた時、騒音レベルの単位は dBA だって教えてくれたでしょ。今日 、駅でバス待ってたら、駅前の緑地の塔に、ただ今の騒音レベルは、何 dB って表示が出てたよ。騒音レベルだから おとうさんが教えてくれたA特性になっているのかな?と思ったんだけど、表示にはAは付いてなかったよ。

お父さん

「騒音レベル」ってことは、A特性だから、Aをつけずに表示したんだろうね。一般の人は 、デシベルならなんとなく音の単位かなって思うだろうけど、Aが付いてると、なんだろうって思うだろうからね。昔は、「ホン」っていう単位も使用されていたんだけど 、1997年からは、dBAに統一されたんだ。「騒音レベル」という言い方も日本だけで、正確には「A特性周波数重み付け音圧レベル」って言うんだよ。

おとくん

長い名前で覚えにくいね。「騒音レベル」の方が解かりやすくっていいね。

お父さん

騒音レベルは、実はとても便利なんだ。騒音って、その多くは、高い音から低い音まで、複雑な周波数成分を持っていて、しかも、時間的に大きくなったり小さくなったりしているだろ。その複雑な騒音に対する人間の反応を 、1つの数値で評価できるわけだから、これはすごいことなんだよ。

おとくん

だいぶ前に、人間の音の知覚には、周波数マスキングと時間マスキングがあるって教えくれたでしょ。騒音レベルは 、その影響も含んでるの?

お父さん

それは、違うんだ。音の大きさを表す「ラウドネス」という評価量があるんだけど、このラウドネスは、マスキングを考慮したもので、人間が聞く音の大きさを正確に捉えたものなんだ。ただ 、これは、計算も複雑で、これを測る計測器もまだ世の中には多くないんだよ。最近は、OA機器や自動車の車内の音の評価など、機械から発生する騒音に、ラウドネスは使われるようになってきたんだけど 、道路交通騒音は騒音レベルで評価することが多いんだよ。

おとくん

それは、どうしてなの?

お父さん

機械って、何か調子が悪くなると、音でわかることがあるだろう。正常ではない状態のときに発生する音のことを「異音」って言うんだけど 、これを騒音レベルで評価すると、人間が感じる音の大きさを正確に表せないことが多いんだよ。つまり、異音は、ある周波数の音が卓越した音の場合が多いから、周波数マスキングを考慮することで 、聴感と対応した音の大きさが表せるんだ。逆に、道路交通騒音は、広い範囲の音の周波数を含んでいるので、騒音レベルで評価することができるんだ。

おとくん

周波数の範囲か?騒音の種類によって、どんな方法で評価するかを決める必要があるんだね。

お父さん

そうだね、確か周波数マスキングの話をしたときに、蝸牛の中での、基底膜の振動の様子を説明してあげたよね。人間の聴覚は 、大まかにはA特性なんだけど、実は、音の高低を区別するために、フィルタを持っているんだ。そのフィルタの帯域を臨界帯域っていうんだけど、これは大体1/3オクターブの幅になるんだよ。

おとくん

???よくわからないな。まず、人間の聴覚にはフィルタがあって、それで音が高いとか低いとか区別してるんだね。・・1/3 オクターブ?・・って何のこと?

お父さん

オクターブは、知ってるだろ。低いドの音から次のドの音まで1オクターブ。このオクターブは周波数では 、倍なんだ。時報の音は、ラの音のなんだけど、最初の3つの音は、440 Hz、最後の長い音が、そのオクターブ上のラで 880 Hzなんだよ。


おとくん

ギターだと、どの音が 440 Hz になるの?

お父さん

1 弦の 5 フレットの音だね。ギターだと、1 フレットが半音だから、次のラの音は1弦の 17 フレット。つまり 、半音が 12 で、1 オクターブだから半音は 1/12 オクターブということになるんだ。ピアノの鍵盤で黒鍵も含めて隣り合う音は、半音だから同じく 1/12 オクターブだね。

おとくん

じゃ、1/3オクターブは、半音が4つで2全音だから、ドとミの間隔になるんだよね?

お父さん

その通り。オクターブは周波数で倍なんだけど、音の分析には、ドレミではなくて、きりのいい 1000 Hz を基準にした中心周波数が使われるんだよ。63 Hz 、125 Hz、250 Hz、500 Hz、1000 Hz、2000 Hz、4000 Hz、8000 Hz・・・というようにね。前に、人間は、大体 20 Hz 〜 20kHz までの音を聴くことができるって教えてあげたよね。でも 、生活する空間に存在する音は、大体、63 〜 8000 Hz だから、この8バンド程度で評価するのが一般的なんだよ。

おとくん

バンドって?

お父さん

そうか 、バンドの話はして無かったっけ。1オクターブの幅を持った周波数の帯域をオクターブバンドって言うんだよ。計算式がむずかしいから、
詳しく説明しないけど、中心の周波数が 1000 Hzのオクターブバンドは 770 〜 1410 Hz の幅、中心の周波数が 500 Hz のオクターブバンドは、355〜710 Hzの幅ってことになる。1オクターブの帯域に含まれる音の強さのレベルをオクターブバンドレベルって言うんだよ。音の分析をするとき 、騒音レベルで、ただ1つの数値で何 dBA と評価するのがもっとも簡単で、大まかな捉え方といえる。ただ、騒音レベルだと、その騒音が周波数の低い音が大きく出ているのか 、高い音が大きく出ているのかは、わからないよね。だから、オクターブバンドや、もっと細かく見るために1/3 オクターブバンドで分析すると、その騒音の周波数的な特徴を捉えることができるんだ。

おとくん

でも何のために、そんな分析を行う必要があるの? 異音が含まれていなければ、騒音レベルで評価はできるんでしょ。

お父さん

騒音の対策をすることを考えてごらん。周波数ごとのレベルがわかると、どの周波数の騒音を対策すればいいかがわかるだろ。例えば 、道路の騒音の測定のときに、騒音レベルだけでなく、オクターブバンドの測定値があれば、防音壁をどのように設計すれば、最適な設計になるか、また、その道路から近い住宅など生活空間で 、どの程度のレベルになるかも、推定できるんだ。

おとくん

なるほど。評価には騒音レベルで十分だけど、対策とか予測を考えると、オクターブバンドの分析が有効なんだね。

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