![]() おとくん 「
この間の修学旅行で日光東照宮に行ってきたんだ。薬師堂にある鳴き竜の下で、お寺の人が拍子木を使って音を出してくれて、竜の声聴くことができたよ。
」 おとくん 「 へぇー。その模型実験って、どんふうにやったんだろう? 」
お父さん 「 昭和40年に出された論文[1]※には、模型実験の前に昭和28年に実物で測定した結果について次のようなことが書いてある。「繰り返される反射波の数は29 回/秒、60 dB 減衰するのに 2.5 秒、6cm のむくり (天井が2次元凹曲面) のため、中央で手を叩いてた音が、天井と床との往復反射で長く響く」 とね。 にあるように、当時のオシログラフで観察した結果、反射波のパルスが連続してあらわれており、これが竜が鳴くと形容された現象を表してるんだよ。模型実験 (1/4スケール)では、むくりの大きさ、音源の位置による波形の違いを観測して、再現するために必要なことを明らかにしたと書かれている。 」 おとくん 「 でも "むくり" がなくても平行な面があると、往復反射になるんじゃないの?」 お父さん 「 いい質問だ。天井が凹曲面の場合、天井に斜めに入射しても入射した方向に戻るように反射するため、反射波が、音源(受音点)の位置に集中するんだ。でも、天井が平面の場合、真上に入射した音は、その場で床との平行の多重反射を繰り返すけど、斜めに入射すると、その角度分外側へ反射の経路は中央から遠ざかるんだよ。だから、天井が凹曲面だと、繰り返す反射波の数は多く、その時間は長くなるんだ。 」
お父さん 「そこが、もう一つの鳴き竜のなぞだね。音が繰り返し聞こえてエコーのようになる理屈は、さっき説明したとおりだけど、もとの音と変わった音に聴こえるには別の理由があるんだ。まず、人間は、継続時間が短い音(パチッという音:パルスという)で連続して聴こえてくる場合、1つの音と音との間隔が、50 ms (0.05 秒) より短くなると音が分離して聴こえず、1つの音として聴こえるんだ。逆に音と音の間隔が 50 ms より長くなると、分離して聴こえる。元の音波がパルスの場合はフラッターエコーといって、パタパタとした音になる。 」 おとくん 「音は、1秒間に約 340 m 進むんだよね。だから 0.05 秒ということは、2つの音が17 m 離れたところから届くと分離して聴こえるけど、それ以下だと一つの音になってしまうということなの? 」 お父さん 「
正確に言うと、おとが聴いているポイントを受音点とする。その受音点に到達する2つの音に時間差が 50 ms 、距離差にして 17 m を境に、2つに聴こえたり、一塊で聴こえたりするということなんだ。だから、日光の鳴き竜は、反射経路の長さからすれば、一つ一つの反射音は分離して聴こえてないはずだね。(※注1) おとくん 「ここにある周波数は、1秒間に何回変化しているかを示してるんだよね。 」 お父さん 「 そのとおり。1秒に1回の 1Hz から順番に聴いてみると、なにか気がつかなかったかい? 」 おとくん 「 おとうさんが言ったみたいに、20Hz ぐらいから音が分離しなくなって、50 Hz より高い周波数では、なにか濁った音に聴こえた。 」 お父さん 「 鳴き竜の絵の下での拍子木の音がもとのカーンではなくて、ビーンって聴こえたのは、これと同じなんだ。 同じ周期で時間的な変動が起きている場合、人間は時間の周期の周波数(変調周波数)が 70 Hz 近辺で、もっとも音の粗さを感じるんだよ。 おとが、濁った感じがしたって言ったけど、言い換えれば、音が粗い、ざらざらした感じで聴こえたということだよね。 」 おとくん 「 日光の鳴き竜には、何か不思議な感じがしたけど、それにはこんな理由があったんだね。 」
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この図(図1)
おとくん 「 でも不思議なんだけど、拍子木の音がビーンって鳴るように聴こえたんだよ。カーンという感じが繰り返される音じゃなかったから、ちょっと驚いたんだ。