戻る

ハイブリッド車の音

ハイブリッド車の音

おとくん

この間、ハイブリッド自動車の音の話がニュースになっていたよ。 車の走行音が静かだから、歩行者に近づいてくる音が聞こえにくく、危険なんだって。

お父さん

そのニュースはお父さんも知っているよ。 実際、ハイブリッド自動車が近づいているのに、かなり近くに来るまで気がつかないことを最近経験したんだ。 確かに危険なこともあるだろうなと思ったよ。

おとくん

ニュースでは、車が人に近づいて行くときに、音が出るような発音装置のテストもしたって言っていたよ。

お父さん

歩行者に気づかせるための音を出すように検討されているみたいだね。 人は五感で自分の周りの環境を把握するんだけど、特に接触していないものに対しては、視覚情報と聴覚情報が頼りだよね。 でも視覚情報は見える範囲でしか把握することができないから、とくに自動車のように動くもので後方から接近してくる場合は、聴覚情報で安全を確認する必要があるわけだ。 ハイブリッド車のように接近してくる音が小さければ、気づかせるために、音を出すというのはある意味自然な発想だね。

おとくん

でも、まだハイブリッド自動車が少ないから音が出る車があってもいいのかもしれないけど、ハイブリッドや電気自動車が多くなってきた時には、わざわざ音を出すというもなんか変な気がするなぁ。 本来は騒音が低くなって静かになることはいいことなのに...。

お父さん

それは、おとの言うとおりかもしれないね。 多分これから環境を静かに保ちながら、安全面も確保するための技術的な取り組みがなされていくんじゃないかな。

おとくん

視覚障害者の人に対しても、静かな車は問題だって言っていたから、後ろから近づくケースだけではないんだね。

お父さん

そうだね。 おとはユニバーサルデザイン って聞いたことあるかい?

おとくん

ユニバーサルデザイン?バリアフリー ってこと

お父さん

うん、同じ意味で使っていることもあるんだけど、その違いは次の説明が一番分かりやすいかな。 まず、バリアフリーは、対象や問題点・目的が最初から明確である場合、例えば、車椅子使用者のために段差をなくすといったことだね。 でもデザインの対象が歩道で、その対象者が視覚障害者だとするとどうだろう? 逆に段差がないと怖くて歩けない・・ということになる。 ユニバーサルデザインは、できる限り多様な人を考慮して開発・設計することなんだ。 [参考文献1]

おとくん

ハイブリッドや電気自動車に気づかせる音をつけるのはユニバーサルデザインの視点が必要ということ?

お父さん

そうだね、どんな人に対しても安全性を確保することは、自動車の最も重要な要件の一つだからね。

おとくん

そうなると、ますます騒音を下げる方向との両立は難しくなるね。

お父さん

そこが知恵の絞りようだね。 その気づかせる音が、気にならない音、すなわち騒音にならなけばいいわけだ。 今、家電にしても、炊飯器なんかご飯が炊けるとピッピッて音がするだろう。 そういう完了など稼動状態を知らせる音を報知音っていうんだけど、その報知音もただ音をつけているだけじゃないんだよ。

おとくん

報知音? ゲームの音も報知音?

お父さん

ゲームの音は、効果音がほとんどだろうけど、それでも間違った操作をしたときは、正しい操作をしなかったという意味が操作者に伝わるように、短いブザーのような音が鳴るよね。 報知音は、その音がもつ性状(高低、長さ、音色)で、意味というかニュアンスが連想させられるようにデザインすることが大事なんだ。 しかもどんな人が聞いてもいやな感じがしないようにね。

おとくん

そうか、駅の自動改札の通過のときの音も、通過できるときは、短くて高いピッという音だけど、通過拒否の場合は、ピンポンって言う音になるね。 報知音がデザインされるようになったのは最近のことなの?

お父さん

特にデザインの重要性が認識されたのはここ数年かもしれないね。 まず自動化した機械が街に溢れてきたこと。 それに、機械で動いていたものが電気で動くようになった。 ちょっと古いけど、かつての蒸気機関車が電車になったように、また、ガソリンエンジン車が電気自動車になるように。 機械は、その機構的な動きに応じた音がするけど、電気はそうじゃない。 そこが難しい点なのかもしれないね。 ますます音のデザインが重要になってくるんじゃないかな。

参考文献1: 音のユニバーサルデザイン 武者 圭 日本音響学会誌65巻3号(2009),pp.159-164

Copyright © ONO SOKKI CO.,LTD All Rights Reserved. | 当サイトのご利用にあたって| 個人情報保護方針