集合住宅の音 その1 床衝撃音

集合住宅の音 その1 床衝撃音

おとくん

今日ね、裏のマンションの 3F に住んでいる「こうぞう君」の家で管理組合のミーティングが持たれるんだって。こうぞう君によるとね、上の階と下の階との住民の間で今数件騒音の苦情が管理組合に持ち込まれているんだって。この上の階の人の騒音が下の階の人にとって、とてもうるさいということで、この苦情をどう解決するかでもめているっていうことだよ。
お父さんは会社で騒音や振動の計測の仕事をやってるよね。マンションは部屋と部屋、上の階と下の階との間は厚いコンクリートの壁で仕切られているのに、何でそんなうるさい音が伝わってくるの。こうした音を防ぐにはどうしたら良いの。ちょっと教えてよ。

お父さん

私や、おと、こうぞう君をはじめ、多くの人たちが毎日生活している空間は、住まいや、学校、職場 、また、それを繋ぐ道路や或いは公園のような外部環境と、大きく分類できるよね。そして、人は、どんな空間にいても、いつも快適な環境であって欲しいと願うんだな。特に安らぎを求める住まいにおいては 、いやな騒音のない静かな環境で暮らしたいと願うことは分かるだろ。特に受験生がいたりすると、勉強に集中したいのに、人の話し声や、レコードの音、がたがたいう外の音が部屋の中へ入ってきて、聞きたくないのに、聞こえてきたら、気になって集中もできないだろう。うちだって、2F でお兄ちゃんがステレオを掛けると、うるさいっておまえはお兄ちゃんに言うじゃないか。うちは、小さい一戸建てだけど、マンションのように多くの家族が別々に暮らしている集合住宅だと 、隣の家と壁一つ,床一つで接していることから、一戸建住宅とは違う騒音が問題となるケースがあるんだ。最近よく聞くのは、床衝撃音というやつだが、たぶんこうぞう君のマンションのケースもそれに当たるんじゃないかな。

おと くん

おとくん

ウーン、お兄ちゃんはステレオをがんがん大きな音でかけるからいけないんだよ。
で、床衝撃音て、何??

お父さん

床衝撃音というのはね、上の階でものを落としたり、こどもが走ったり、飛び跳ねたりした場合に下の階で聞こえる音のことをいうんだ。上の階で、椅子を動かしたりするカタガタ・ゴトゴトという移動音や、また、スプーンやコインなど軽く硬いものをある高さから落とすとカチーンとか、コチーンとかいった高い音がするだろう、こうした音は一般的には軽量床衝撃音というんだ。また、子供や幼児が椅子やソファから飛び降りたり 、飛び跳ねたりするときに出るバターンとかドシーンといった重い音は、重量床衝撃音というんだよ。この2つの衝撃音の内、軽量床衝撃音というのは、マンションの床仕上げ材として最近多く使われているフローリング材の場合に、とくに問題となるようなんだ。最近、畳に代わってフローリングの部屋が増えているのも大きな原因だな。こうぞう君のマンションもフローリングの部屋が多いんじゃないかな。こうした場合には、部分的にカーペットを敷いたり 、スリッパもパタパタ音が発生しないものに変えたり、また椅子の足にクッション材を貼るなどして、出来るだけ音を和らげるようにすることで、比較的対応することができるんだ。だけど、重量床衝撃音の場合は、躯体とよばれるコンクリートの床スラブの仕様、厚さや、梁で囲まれた面積や、床スラブの種類、といった物でほぼ性能が決まってしまうんだ。また、設備配管などを収めるスペースとしての利用から、置き床といって、躯体に束を立てて、仕上げの床との間に空間がある工法が用いられているんだが、この場合には、床スラブだけの場合に比べ音を遮る性能が落ちるケースもあるんだ。ちょっと難しくなったけど、簡単に言うと、重量衝撃音は建物を建てるときの設計図によってはじめに決まってしまうんだ。その為、この対策は難しいんだよ。上の階の人と下の階の人がよく話し合って大きな音を立てないように気を付けてもらうしか無いんじゃないかな。一番良いのは仲良くなる、友達になることだな。おとだって、友達のお願いなら聞くだろう。それに、友達ならお願いもしやすいじゃないか。

おとくん

友達になるか。
でも、もっとこれといった対策はないのかな。

お父さん

床衝撃音は、上の階と下の階の人が、100% 発生する側、受音する側とに明確に切分けられるんで 、お互い様という妥協点が見出せずに、問題となりやすいんだよ。家族ならば、ちょっとの間我慢してくれとかいえるんだがね。それに、音というのは感覚的なものだから、人によって不快と感じるレベルが違うし、同じ人でも体調や気分によってどうしても左右されてしまうんでなかなかやっかいなんだ。でも、最近になって、マンションでのこうした音問題が増えてきていることから、対策と言うことではないが、音に対しての基準がもうけられて、表示されるようになってきているよ。遮音等級といって、音の伝わりにくさを等級付けして表示すようになってきているんだ。床衝撃音も L+数値の等級で定められていて、Lの後ろの数字が小さいほど遮音等級が高く、音が伝わりにくい構造を持ったマンションと言うことになるんだ。ただし、これは対策では無いな。マンションをこれから購入する人にとっては役に立つ数値等級だけど、購入してしまった後だとね。こうぞう君とこのマンションは最近建てられた物ではないんで、たぶんこのL値等級表示は無かったろうな。マンションは多くの家族が暮らす一つのコミュニティだから、共生=共に一緒に生活すると言うことを最優先で考えてお互いが少しずつ気を遣ってゆくしかないね。

おとくん

明日、こうぞう君にどうなったか聞いてみるよ。
今日の話も、話してあげようかな。


<補足>
集合住宅の遮音・床衝撃音の性能を定めたものとして、建築学会、JIS、住宅性能表示による等級があり、評価基準として混在して用いられているのが現状です。床衝撃音の適用等級として最も多く用いられている建築学会の例を下表に示します。マンション購入時などには参考となりますが 、あくまでも目安として考えることが必要です。

床衝撃音に対する遮音等級と生活実感 (建築学会)
遮音等級 L-40 L-45 L-50
人の走り回り
飛び跳ねなど
かすかに聞こえるが
遠くから聞こえる感じ
聞こえるが、
意識することはあまりない
小さく聞こえる
椅子の移動音,
物の落下音など
ほとんど聞こえない 小さく聞こえる 聞こえる
生活実感、
プライバシーの確保
・上階で物音がかすかにする程度
・気配は感じるが気にならない
・上階の生活が多少意識される状態
・スプーンを落とすとかすかに聞こえる
・大きな動きが分る
・上階の生活状況が意識される
・椅子を引きずる音は聞こえる
・歩行などが分る

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