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絶対音階

おとくん 「おとうさん,前にドップラー効果の話をしてくれたとき,絶対音階を持っている人は,音を出しながら移動するものがあると,速度がわかるってこと説明してくれたでしょ。今日,音楽の時間に,先生が絶対音階の話をしてくれたんだ。第2次世界大戦中に,敵・味方の飛行機を聴き分けるために,当時の学校では,絶対音階を持つことを教育されたことがあったんだって。ほんとにそんなことしたのかな?」


お父さん 「うん,その話はお父さんも聞いたことがあるなぁ。絶対音階を持っている人は,前に話したサイレンの音みたいに特定の周波数の音だけではなくて,機械から出る騒音にも,音名が言える能力があるんだ。そのことを『ラベリング』というんだけど,敵の飛行機の機種を聴き分けるという意図で,そんな教育が行われたんだろうね。その効果は怪しいけどね。」


おとくん 「教育でそんな特別な能力がついちゃうの?」

お父さん
 「幼い頃から,専門的な音感教育を受けることで,後天的にも成長する能力ということらしいよ。音楽専攻の学生のなかで,絶対音階を持っている人の比率は,一般の人と比べると遥かに高いということだから。ただ,そういう能力のある人が集まっているともいえるけどね。」



おとくん 「それにしても,どんな音でも,その音階がわかるって楽しいだろうね。」


お父さん
 「確かに,音楽を専門とする人にとっては,有利な能力であることは間違いないね。ただ,こんな話もあるんだよ。演奏に集中すればするほど、ホールの雑音が音符として浮かび上がるという演奏家もいるし,音楽を聴きながら本は読めないとか,クラシックを聴いていても,それはすべてドレミの言葉として聴こえてしまうとか,絶対音階を持っているために,それが不利に働くことがあるんだよ。」


おとくん 「へぇー,便利なことばかりじゃないんだね。」

お父さん 「他にも,絶対音階を持っていることが不利になることがあるんだ。楽譜の音符って半音より細かい音って表現できないだろう。でも音楽の中には,半音より細かい音を使った表現があるんだ。伝統的な沖縄の音楽は音符を使った楽譜ではなく,音階を表現する『工工四』(くんくんしい)という漢字を使った記号で表記されているんだ。沖縄に三線(さんしん)って楽器があるのを知っているよね。三線の演奏は,絶対音階にない半音の半音のような音を使うんだよ。その音符にない音が,絶対音階を持っている人には,どうしてもずれて聴こえたり,自ら演奏してもその微妙な音が出せないということがあるらしいよ。」

おとくん 「絶対音階って,前にお父さんが話してくれた『アナログとディジタル』のディジタルみたいな印象があって,味気ないって感じがするね。」

お父さん 「うーん,それとはちょっと違うかもしれないけど,音階が頭に固定的にインプットされていると,融通がきかないってことは言えるかもしれないね。絶対音階の不利な話しばかりになっちゃったね。有名な演奏家には絶対音階を持っていたといわれ人が多いけど,ベートーヴェンは,半音低く調律されたピアノで,ホルン・ソナタを演奏したとき,自ら半音上げてピアノパートを演奏したという逸話があるんだよ。音楽家にとっても,絶対音階は,いい面,悪い面があるんだね。」

 

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