6-1 音の大きさ(loudness)
音の大きさは、音の強さに関係する感覚量で、音の高さと音色に並ぶ音の知覚に関するもっとも基本的な性質の1つです。単位として、sone(ソーン)を用い、純音(1
kHz)の音圧レベルが 40 dB を
1 sone とする比率尺度で表現されます。例えば、正常な聴力を持つ人が、1
sone の純音の 2
倍の大きさと判定する音の大きさは、2 sone です。
下図 6-1 は、音圧レベル(dB)と音の大きさ(sone)の関係をオクターブバンド毎に求めたもので、1
kHz の場合をみてみると、音圧レベルが 10 dB
増加すると、音の大きさは 2 sone すなわち
2 倍になることが分かります。また、他の周波数帯域でも、1
kHz の場合と多少異なりますが、音圧レベルが 10 dB
増加すると、音の大きさはほぼ 2
倍となる関係は同じとなります。このように音の大きさは主に音の強さに依存するとともに、周波数にも依存します。さらに、音の持続時間にも依存し、持続時間が
150 〜 300 ms
の間で定常状態と感じます。
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図 6-1 音圧レベルと音の大きさの関係 |
6-2 音の高さ(pitch)
音の高さは、先に述べたように音の周波数に関する聴覚上の性質のため、音の強さが一定の純音に対しては、周波数と高さは
1 対 1
に対応します。すなわち、周波数の高い音は高く、周波数の低い音は低く感じます。単位としては、mel(メル)を使用し、周波数
1 kHz、音圧レベル 40 dB の純音を
1000 mel とする比率尺度で表現されます。
このように、音の高さは、主として音の周波数によって決定されますが、複合音の高さについては周波数成分の組み合わせ等により、一意的に決まらないことがあります。また、音の強さや、先行音、後続音の有無によっても影響を受けます。
6-3 音色(timbre)
同じ大きさで同じ高さの音を発していても、我々は楽器の種類を区別することができますが、このように、2
つの音の大きさがともに等しくても、その 2
音が異なった感じを与えるときその相違に対応する性質を音色といいます。
音色の研究は古くから行われてきていますが、現在でも十分には解明されておりません。最近の研究によれば、音色は美的因子、金属性因子、迫力因子の
3 つによって決定されているとされています。
6-4 音の大きさのレベル(loudness
level)
先に述べたように、音の大きさは主として音の強さに依存しますが、その周波数や持続時間にも依存し、持続時間が
150 〜 300 ms
の間で定常状態と感じます。 そこで、定常音について、正常な聴力を持つ人が、その音と同じ大きさに聞こえると判断した
1 kHz の純音の音圧レベルの値を、“音の大きさのレベル”
P(phon、フォン)と定義します。周波数による人間の聴感の変化に関する測定は、フレッチャー・マンソン(Fletcher-Munson)に始まり、1957
年にロビンソン(Robinson, F)らによって再測定がなされました。以下図
6-2 は、ロビンソンらが測定した正当な聴覚を持つ人が等しい大きさに感じる純音の音圧レベルと周波数の関係を示した曲線で、等ラウドネス曲線あるいは等感度曲線と呼ばれています。なお、ロビンソンらが測定した等ラウドネス曲線には大きな誤差が含まれていることが分かり、2003
年に新しい等ラウドネス曲線が ISO 226
として国際規格化されています。図では旧等ラウドネス曲線を青色で、新ラウドネス曲線を赤色で示し対比させています。
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図 6-2 純音の等ラウドネス曲線(新旧比較) |
この図より、人間の聴覚には次のような特徴があることが分かります
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低い周波数では、耳の感度は非常に悪くなります。例えば、音の大きさのレベルが
40 phon の曲線を例にとれば、音圧レベル
40 dB で周波数
1 kHz の純音に対して、250
Hz では約 10 dB、63
Hz では約 35 dB
も強い音で無いと同じ大きさに聞こえません。
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周波数 4 kHz
近傍で耳の感度は最も鋭くなり、1 kHz に比べて数
dB 良くなります。
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4 kHz
以上の高い周波数では、耳の感度は周波数の増加にともなって一様に変化するのではなく、波を描くように増減しながら全体的に感度が悪くなっていきます。
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人間が音として感じることができる周波数の範囲は、音の強さによっても変りますが、 低域の周波数限界(最低可聴限)は
15 ~
20 Hz、高域の周波数限界(最高可聴限)は約
20 kHz となります。
この等ラウドネス曲線は、多数の青年の平均値として考えて良いのですが、実際にはかなり個人差があり、20
才をすぎると老化現象が表れて、最高可聴限が年齢の増加とともに低下してゆきます。
以上のように、純音の大きさのレベルは、等ラウドネス曲線により求めることができますが、複合音についても、その音圧から音の大きさのレベルを予測する方法が
1937 年フレッチャー・マンソン以来いくつか提案されています。
現在、国際基準(ISO 532)では、スティーブンス(Stevens,
S.S)の方法とツビッカー(Zwicker, E)の方法が採用されています。
6-5 騒音レベル(A-weighted
sound pressure level)
騒音とは、人間にとって望ましくない音のことで、いかなる音であっても、聞き手にとって不快な音、じゃまな音と受け止められると、その音は騒音と見なされます。すなわち、騒音は人間の聴感に基づいた感覚量であるため、その大きさを表すためには、音の物理的な大きさではなく人間の聴感に基づいた量を用いなければなりません。そこで、騒音の音圧レベルに、前の
6 章 4
節で述べた等ラウドネス曲線に従った周波数重み付け(A
特性)をした音圧レベルを騒音の大きさを表す量として用い、“騒音レベル”
LA(単位:dB)と呼びます。
騒音レベルを測定するためには、騒音計を使用します。騒音計は、マイクロホン(通常コンデンサーマイクロホン)によって、音圧に比例した電気信号を発生し、周波数補正回路により、A
特性の周波数重み付けをした音圧レベルを表示します。
| (注意)
“騒音レベル”という用語は我が国独特の言葉で、上記の説明にあるように“A
特性音圧レベル(A-weigted sound
pressure level)”と同義語として使われています。さらに、新
JIS(JIS C 1509)では、周波数重み付きの音圧レベルに対して新用語“サウンドレベル
(sound level)”を定義しており、それによれば、“A
特性時間重み付きサウンドレベル(A
weighted and time-weighted sound level)”に相当します。 |